「そっくりな人」は遺伝子も似ている? 性格は? 行動はどう? 科学者が調べてみた
では性格は?
ブルネル氏の写真プロジェクトを元に研究を行ったもうひとりの科学者が、米カリフォルニア州立大学フラトン校の心理学教授で、「双子研究所」の創設者兼ディレクターでもあるナンシー・シーガル氏だ。氏は主に双子を対象に研究しているが、ブルネル氏のプロジェクトについて知った際、これはささやかながらも活発に議論が行われているある科学論争に決着をつけるいい機会だと考えたという。 「一部の科学者は、双子の性格が似ている理由を、遺伝的な共通性によるものではなく、外見が似ているせいで人々が彼らを同じように扱うためだと考えています」と氏は説明する。もしその意見が正しいのであれば、「写真に写っている互いに無関係なそっくりな人たちも、別々に育てられた一卵性双生児と同じくらい性格が似ているはずです」 シーガル氏は、ブルネル氏の被写体の中から候補者を募り、そこにキャンパスや学会などで偶然見つけた何組かのペアも加えて、彼らに性格についての質問票を渡し、外向性、神経症傾向、誠実性、協調性、開放性(いわゆる性格の5大因子)を測定した。その後、得られたスコアを、離れて育てられたケースを含むさまざまな双子たちのグループと比較した。 その結果、シーガル氏の予想通り、単なる見た目のそっくりさと性格の間に関連はなかった。一方で双子の場合は、統計的に性格的特徴を共有する可能性がより高いことがわかった。 また、被験者の自尊心の測定においても、互いに無関係のそっくりな人同士には類似が見られなかった。
行動はどう?
エステラー氏の研究に参加したそっくりさんペアには、顔以外にも似ているところがあった。骨の長さを制御する遺伝子のおかげで、彼らは歩き方も似ている可能性があるのだ。 「一方が喫煙者であれば、もう一方も喫煙者であることが多いです」と、エステラー氏は言う。なぜなら、依存的な傾向は、利き手や近視と同じく、遺伝の影響をより受けやすいからだ。 ティモシー・シャラメのそっくりさんは、歩き方や声が本人と似ている可能性はあるが、必ずしも同じようなカリスマと才能を持っているとは限らない。 たとえ自分のそっくりな人を見つけたとしても、「多くの人はがっかりするでしょう。なぜなら、だれかと見た目が似ているからといって、それは性格まで似ていることを意味しないからです」とシーガル氏は指摘する。