光合成やめた植物、頼りは花粉運んで種もまく昆虫…神戸大チームが珍しい共生関係発見
天草諸島・下島(熊本県)に自生する寄生植物「アマクサツチトリモチ」が、花粉を運ぶ作業(送粉)と種まきを、バッタの仲間のカマドウマとアリに頼っていることを、神戸大のチームが発見した。送粉と種まきの両方を同じ昆虫が行う報告はこれまでになく、特殊な環境で共生関係が成立した珍しい例という。論文が国際科学誌に掲載された。 【画像】天草諸島などに自生するアマクサツチトリモチ。上部に雌花、下部に雄花をつける=末次教授提供 植物界では通常、送粉はチョウなどの昆虫、種まきは鳥が担うことが多い。
アマクサツチトリモチは、多湿で薄暗い森林の木の根に寄生。東南アジアなどにも分布する。光合成をせず、高さ5~10センチのキノコのような形で、上部に雌花、下部に雄花をつける。こうした生息環境ではチョウなどを引きつけるのは難しい。
末次健司教授らは、天草諸島の下島で、花が咲き果実ができる10~12月、集中的に観察しながら13万枚以上を撮影し、関係する生き物を調べた。
その結果、花の咲く時期に、暗がりや多湿を好むアリとカマドウマが何度も訪れ、花粉を体に付けて行き来していた。
さらに、アリは種の付いた葉を切り取って巣に運んでいたほか、カマドウマは果実を食べ、フンから種が見つかったことから、いずれも種まきの役割を果たしていることが確認された。
昆虫が種まきを行う事例は少なく、末次教授は「風通しの悪い暗い環境下で生きていくため、進化の過程で光合成をやめ、種子を小型化するなどしながら、小回りのきくパートナーを得たのだろう」と話している。
石川県立大の北村俊平准教授(植物生態学)の話「送粉や種まきと縁遠そうな2種類の昆虫の新たな役割を明らかにした意義深い成果だ。この植物はタイやミャンマーなどにも分布しており、今回の共生関係がこの地域特有なのか、普遍性があるのか、さらなる研究が期待される」