"酒都”久留米で老舗の酒蔵巡りを満喫
「酒」という言葉を聞いただけで、右手がそわそわ。盃を持たないといたたまれなくなる、という向きには福岡県久留米市はパラダイスである。久留米市内には13か所の酒蔵があり、江戸・明治の時代から味を競ってきた。その中から試飲ができる3か所の酒蔵を巡り、魅力を探ってみた。 まず訪れたのは、1854年創業の瑞穂錦(みずほにしき)酒造。西鉄天神大牟田線の大善寺駅からバスに乗り、筑後川の支流、広川のほとりで降りる。酒蔵を改築したウナギ料理店を併設している。 試飲だけ頼むのは気が引けたが、社長の津留﨑雅俊さんは「どんどんきんしゃい」と言ってくれた。原酒と純米酒を飲んだが、どちらも骨太できりっと引き締まった男酒だ。日本酒の原点を守り、磨き抜かれた酒、という印象を受けた。 【写真】久留米ラーメン 清陽軒本店のすっぴんラーメン
続いて、バスで池亀酒造へ移動。「昔は私が杜氏をやっていた」という社長の蒲池(かまち) 輝行さんが今も司令塔として40銘柄の酒を造っている。 正統派の日本酒だけでなく、ロゼワインのような風味の酒や、グラッパ(イタリアの蒸留酒)を連想させる酒もある。試飲用にも常に6、7銘柄を用意しているという。飲み比べると、風味の違いがよく分かり、酒の世界の奥深さに感服した。 最後に向かった杜の蔵は三潴(みづま)駅に近く、試飲や買い物ができる「杜の離れ」が評判だ。見事な日本庭園や木目が鮮やかに磨かれたテーブルなどの調度品が、酒蔵にふさわしい雰囲気を醸し出す。「のみくらべセット」は、60ミリ・リットルの好みのグラス酒2種につまみが付いて500円。純米大吟醸と純米酒を飲んだが、どちらも軟らかい口当たりですっきりとした味わい。気に入ったので、土産用に720ミリ・リットルの純米酒を買った。
飲んだ後の締めは、やはり豚骨ラーメンだ。花畑駅で降りて、「久留米ラーメン 清陽軒本店」ののれんをくぐる。「同じ豚骨スープでも、博多と久留米では作り方が違うんですよ」と店長の須賀聡さん。久留米ラーメンのスープは、博多と比べてあっさり味なのが特徴という。 ほろ酔い気分で、腹も満たした後は、西鉄久留米駅近くの湯の坂久留米温泉へ。源泉かけ流しの湯で、心も体もゆったり解きほぐされた。 飲んで、食べて、癒やされて。これで総額は4765円。大満足の旅となった。 文・写真/太田正行