宇都宮ライトレール、国内初の全線新設LRTに「課題」 外国で主流の乗客を〝信用〟する運賃収受方式とは? 「鉄道なにコレ!?」【第50回】
雷が多く「雷都」とも呼ばれる栃木県の県庁所在地の宇都宮市に、「ライト」の名前が入った次世代型路面電車(LRT)が誕生した。日本で初めての全線新設LRTとして8月26日に開業した「宇都宮ライトレール」(愛称「ライトライン」)だ。マイカーからの移行が進んで脱炭素化に一役買うことが期待される一方で、LRTが発達している欧米の路線との運営方法の違いが「課題」となっている。(共同通信=大塚圭一郎) ※筆者が音声でも詳しく解説しています。共同通信Podcast #47【きくリポ・鉄道なにコレ!?特別編6】を各種ポッドキャストアプリで検索してお聞きください。 【宇都宮ライトレール】JR東日本の東北新幹線や在来線と接続する宇都宮駅東口(宇都宮市)と、ホンダの研究開発拠点などがある芳賀・高根沢工業団地(栃木県芳賀町)の14・6キロを結ぶ次世代型路面電車(LRT)の路線。事業費は約684億円で、半分を国の補助で賄い、他は宇都宮市や芳賀町、栃木県が負担する。
宇都宮市と芳賀町が設備を保有し、宇都宮市や芳賀町、関東自動車などが出資する第三セクター企業「宇都宮ライトレール」が運行する「公設型上下分離方式」を採用した。全線が電車の行き違いができる複線となっており、新潟トランシスが製造した3つの車体からなる低床式車両「HU300形」(定員160人)を使う。 ▽戦後に廃止が相次いだ路面電車 日本の路面電車は、ピークだった1932年に65都市で走り、路線の長さは延べ約1500キロに達していた(国土交通省調べ)。 しかし、第2次世界大戦後のマイカーの普及を背景に、自動車による交通渋滞が問題化すると、道路に先乗りしていたはずの路面電車が“邪魔者”扱いされる事態に追い込まれてしまった。1950年代後半から70年代にかけて特に廃止が相次ぎ、2000年代初めの路面電車の路線長は延べ200キロ程度まで縮小していた。 これに対し、欧米では利用しやすく、マイカー移動に比べて環境負荷の低減にもつながる公共交通機関として路面電車が再評価されるようになった。切り札となったのが欧州やカナダ、米国などで整備が進んだLRTだ。 ▽LRTとは