宇都宮ライトレール、国内初の全線新設LRTに「課題」 外国で主流の乗客を〝信用〟する運賃収受方式とは? 「鉄道なにコレ!?」【第50回】
宇都宮ライトレールも誕生したことで日本のLRTを含めた路面電車の運行事業者は19となり、路線長は延べ230キロ弱となった。 ▽外国のLRTの運賃は「信用乗車方式」が一般的 宇都宮ライトレールが開業する前から筆者が「課題」だと受け止めていたのが運賃収受方法だ。筆者が現在駐在している米国を含めた外国のLRTの一般的な方法とは異なる。宇都宮ライトレールでは運賃収受でもたつき、LRTの売りであるスピーディーな運行が阻害されかねないと危惧していたのが現実化して遅れが頻発していると聞いた。 外国のLRTは一般的に、利用者が切符を自己管理する「信用乗車方式」を採用している。切符をスマートフォンのアプリ、または停留場などにある券売機で買い、乗車前に有効化する。利用者は停留場側にあるLRTのどの乗降扉も利用でき、運賃収受業務には携わっていない運転士は乗り降りが終われば発車する。 利用者が適正な切符を持っているかどうかは、係員が抜き打ちで車内を巡回して検札する。もしも不正乗車が発覚した場合は高額な罰金を科す。米国では日本の鉄道警察隊に当たる運行当局の警察が確認しており、激しく抵抗して逮捕される違反者も出ている。
▽検札で無賃乗車が発覚したら…罰金は乗車券の25倍 一例として筆者が住んでいる米首都ワシントンに隣接するメリーランド州では、人口が約57万人(米統計局の2022年7月時点推計)の最大都市ボルティモアにLRTが走っている。片道1時間半以内ならばLRTと地下鉄、路線バスを自由に使える乗車券が2ドル(1ドル=140円で280円)、1日乗車券は4・60ドル(同640円)だ。 検札で切符を持っていない無賃乗車が発覚した場合の罰金は50ドル(同7千円)と、片道乗車券の25倍になる。日本で適用している「該当区間の普通旅客運賃の3倍を支払う」というルールよりもずっと重い。 メリーランド州は2013~16年に計739万7277件を調べたところ、無賃乗車は2・15%に当たる15万9508件だったと説明している。ただ、筆者はこれまでにボルティモアのLRTを累計30回超乗ったが、検札を受けたのは1回だけと頻度は低い。見回りに来た警察官が乗車券の提示を求めたため、スマホの1日乗車券の画面を見せた。