DVで妻子が家出しても「俺は間違ってない」と怒る夫。ある日“上司の言葉”で目が覚めた<漫画>
二度と妻子に会えなくなった“上司”の言葉
――だんだんと変わっていく翔、翔の変化を戸惑い恐れながらも感じていく彩や娘の柚。翔の変化のきっかけとなった会社の上司や後輩、そして両親……。多くの人が登場しながら話は進んでいきますが、お二人の中で印象に残っている、好きなエピソードはどの場面でしょうか。 中川:僕は130ページで上司の鳥羽さんが「それが子どもと話した最後になるかな」と言う場面です。GADHAには、鳥羽さんのような人がたくさんいます。加害を自覚して、変わろうとしたし、今も変わろうとしているけれども、もうパートナーからもお子さんからも関係を断絶されているケースです。 僕は、そのような状況の人の話を聞くと本当に胸が苦しくなります。1つには加害者のその苦しみに、そしてそれ以上に、関係を断絶するしかないと思うに至るまでに傷ついてきたパートナーやお子さんのことを思うからです。そういう人の中には、もはや加害者変容をする意味がないではないかと思う人もいます。そう思う気持ちは自然なことだと思います。変わったって何したって、意味ない。自分は一人で孤独に死んでいくんだ、と。腐る気持ちもわかります。 しかし、鳥羽さんのように、自分の過ちを元に、関わる人たちを、生きやすくするために何か働きかけることはできると思います。そしてそれが、多くのケアの循環や往復を生み出すことになり、いつか、もう会えないパートナーやお子さんにも、その優しい関係性が届くかもしれません。綺麗事かもしれませんが、そんなことがあると信じて、人は学び変わっていくことができると願っています。そのような意味で、このエピソードは僕にとってとても特別で重要な場面でした。 龍:わたしも上司の鳥羽さんとのエピソードです! 描いてて楽しかったキャラクターですし、自分の経験から翔にアドバイスをする場面でも、決して上から目線で自分語りではなく、丁寧に言葉を選ぶ感じ……好きです(笑)。実際はなかなかこういう人いないかもしれないですけど、本当にいたらいいなぁ~と思うキャラでした。 【龍たまこ】 3人の子どもを育てるマンガ家。1981年生まれのシングルマザーで、保育士の資格を持つ。ライブドア公式ブログ「新・規格外でもいいじゃない!!-シングルマザーたまことゆかいな子ども達-」をほぼ毎日更新中。著書に『規格外な夫婦~強迫症夫と元うつ病妻の非日常な日常~』(宝島社)、『母親だから当たり前? フツウの母親ってなんですか』(KADOKAWA)。X(旧Twitter):@ryutamako、Instagram:@ryu.tamako2 【中川瑛】 モラハラ・DV加害者変容に取リ組む当事者団体「GADHA」代表。妻との関係の危機から自身の加害性に気づき、ケアを学び変わることで、幸せな関係を築き直した経験から団体を立ち上げる。現在は加害者個人だけではなく、加害的な社会の変容にも取り組んでいる。著書に『孤独になることば、人と生きることば』(扶桑社)、『ハラスメントがおきない職場のつくり方 ケアリング・ワークプレイス入門』(大和書房)。X(旧Twitter):@EiNaka_GADHA <構成/女子SPA!編集部> 【女子SPA!編集部】 大人女性のホンネに向き合う!をモットーに日々奮闘しています。メンバーはコチラ。X:@joshispa、Instagram:@joshispa
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