イワシ大量水揚げのはずが一転、鹿島港沖で漁船沈没の悲劇…予測不可能な転覆原因
「網を引き揚げている際に魚が多く入ったため、徐々に船が傾いた」 救助された乗組員は転覆した原因について、こう話しているという。 【写真】俳優・小野武彦さんに直撃! 仕事がなくて転職する寸前に救ってくれた恩人とは? 「巻き網漁船が転覆したようだ」 6日午前2時10分ごろ、茨城県・鹿島港の沖合で近くを航行する漁船から海上保安庁に118番通報があった。 転覆したのは大津漁協所属の「第8大浜丸」(80トン)で、日本人15人、インドネシア人5人の合わせて20人が乗船。17人が救助されたが、50代と60代の日本人男性2人の死亡が確認された。茨城海上保安部は、残る日本人男性3人の捜索を続けている。 現場は鹿島港から約31キロの沖合。事故当時の天候は晴れ、波も穏やかで船が転覆するような気象条件ではなかった。同保安部は網に魚が多く入り、船がバランスを崩して転覆した可能性があるとみて詳しい原因を調べている。 茨城県旋網漁協によると、同船は今年初操業となるイワシ漁をするため5日正午ごろ、大津港を出航。3隻で船団を組み、同日夕方、1回目の巻き網漁を行い、6日午前0時過ぎから2回目を開始した。 転覆した漁船は「網船」という網を巻き上げる役割を担い、魚を探す「探索船」とロープでつながれ、バランスを取りながらそれぞれ数百メートルの範囲にいた。 操業開始から約2時間後、網船が大量のイワシを引き揚げたところ、船体が右に傾き始め、船員たちは次々と冬の冷たい海に投げ出された。 「当時、大浜丸を含め24船団が同じ漁場で操業していました。入網状況から考えると、魚の量は300トンかそれ以上あったのではないか。普段なら2、3回かけて船に積める量の魚をとりますが、この日は1回の操業で十分な量がとれたため、『水揚げに戻ります』と漁を終える船が多かった」(旋網漁協関係者) ■魚群の群れが変化したのか それだけの重さの魚を引き揚げるとなると、船が傾くことは予想できたはず。ではなぜ網船は転覆したのか。 「それを踏まえた上で魚群探知機やソナーで魚群を追いかけ、とれる魚の量を予測して網を巻きます。一網打尽にするのではなく、水揚げできる範囲内で巻く。ただ魚は動きますから予想より多かったり、少ないこともあります。多い場合には網を絞って漁獲量を調整したり、あるいは網が破れて魚が逃げ出します。本当に危険なら自ら網を切ることもある。何かのきっかけで網の中の魚群の向きや動きが変わり、網に余計な力がかかることも考えられます。実際、転覆までいかなくても網の中の魚が急に動いて船が傾き、ヒヤッとすることもあります。乗組員も魚がたくさん網にかかっていることはわかっていたはずですから、何らかの要因があったのでしょう」(前出の関係者) 現場付近の昨年のイワシの水揚げ量は前年比10~20%減だったが、先月中旬ごろから大漁が続き、年末はまとまった水揚げがあった。年が明けても豊漁は変わらず、地元の漁業関係者が喜んでいた中での痛ましい事故だった。 ◇ ◇ ◇ 東京・豊洲市場で5日に行われた初競りで、青森県大間産の276キロのクロマグロが2億700万円の歴代2位の最高値で競り落とされた。 最高値の「一番マグロ」を延縄漁で釣り上げたのは漁師歴約25年の竹内正弘さん(73)だった。●関連記事【もっと読む】『マグロ初競り歴代2位の2億700万円! 釣り上げた青森・大間の漁師は工務店社長もこなす「二刀流」』で詳報している。