まるで「らんまん」主人公?絶滅寸前の希少植物の解明に奮闘する、科博研究員の仕事とは #ニュースその後
日本史上最高支援額の9億円を記録したクラウドファンディング
植物の標本に限らず、科博にはそうした「地球の宝」が膨大にある。それらを確実に後世に引き継ぐために2023年8月から実施したクラウドファンディングでは、9億円以上が集まった。その運営サイトであるREADYFORの文化部門長・廣安ゆきみさんは、成功した要因をこう語る。「『#地球の宝を守れ』という普遍的で壮大なキャッチコピーを掲げたことで、科博の存在意義と、現在直面する危機の切迫感が伝わったと考えています」。 バラエティに富んだ返礼品は話題を呼び、支援者は5万人を越えた。中でも注目を浴びた一つが「オリジナル図鑑」だ。在籍する研究者全員が担当ページを持ち、思い入れのある標本を紹介する。海老原さんが選んだのは、初めての研究題材にした「ローゼンストッキア」だ。透き通るように繊細で美しい葉を持つ希少種。ニューカレドニアのごく一部にしか自生しておらず、実物を目にしたことのある人はほとんどいないという。図鑑には海老原さんが現地で撮影した写真もカラーで掲載される予定だ。 日本にも、限られた場所でしか見られない種類がたくさんある。コマチイワヒトデもその一つだ。「そうした種類を絶滅させないことが、自分たちの使命だ」と海老原さんは語る。 今回の調査で持ち帰ったコマチイワヒトデと思われるうちの4株は、温室内の鉢に丁寧に植え付けられた。まだ頼りない姿だが、やがて再び葉をつける。胞子をつけるまでに成長し、その胞子から新たな命が誕生する日を思うと、海老原さんの表情は緩む。
標本と生きたコレクションの両方で未来につなぐ
「標本は死んでいますが、そこから多くの情報を得ることができます。死んでいる標本と生きている植物。両方を最大限に活かして、これからも研究を進めていきたい」と海老原さん。 希少なシダをどう守っていくか。その答えを追い続けるうえで、標本を残し情報を蓄積していくことは重要だ。海老原さんは、標本をしっかりと守り継ぐことができれば、未来に開かれる可能性は大きいという。「絶滅を防ぐのに役立つ情報を得るための研究をしたい。必要な情報はたくさんあって、人間の理解が追いつかない部分もあります。それを少しでも理解することが、きちんと守っていくことにもつながっていく」。シダ植物の多様性解明への、長い道のりが続く。 【クレジット】 監督 内田英恵 プロデューサー 前夷里枝 記事監修 国分高史 中原望 飯田和樹