18世紀の邸宅で、歴史と創造性を美しくミックス。|アーティストの別荘訪問(3)
フランスの生活に根付く"暮らしの美学"、アール・ドゥ・ヴィーヴル。その精神を体現するアーティストの別荘を訪問。アントワネット・ポワソン創設者のヴァンサン・ファレリーとジャン=バティスト・マルタンのブルターニュ地方の家へ。
18世紀の邸宅を修復し、同時代の手法の壁紙で彩る。
ふたりが18世紀と同じ木版印刷の技術で、32×42センチのドミノペーパーを使った壁紙を作り始めたのは2012年のこと。その頃のインテリアはすっきり無地の北欧風がトレンドだったので、わずかな愛好家の間でしか知られていなかった。「初めてメゾン・エ・オブジェの見本市に参加したら、パリのボン・マルシェやニューヨークのジョン・デリアンに気に入られたのです」とジャン=バティストは語る。
Entrance
玄関ホールのややざらついた板の間仕切りは、もともとあったもの。素朴な木のモチーフを手描きした結果、味わいがあって明るく、奥行きを感じさせる仕上がりに。スイッチはフォンティーニ製と、ディテールにこだわっている。
Bathroom
その後、コロナ禍のロックダウンで、家は自己表現の場として見直され、カラフルでミックススタイルのインテリアがクローズアップされるようになった。アントワネット・ポワソンはグッチ、ジアン、ヴェルサイユ宮殿などとコラボし、テキスタイルコレクションから食器や香水まで手がけるまでになる。さらにはパリのアトリエに加え、ブルターニュ地方のポール=ルイに家を購入することに! それは、ふたりにとって予想外の展開だったという。 「顧客のフランソワーズ・ブーズから、ポール=ルイがきっと気に入るであろう18世紀の邸宅がある、と連絡が入りました。購入の予定はまったくなかったのですが、フランソワーズが当時の所有者との約束を取り付け、20年2月に見学に行きました。奇跡的なまでに保存状態が良かったのは、歴代の所有者がきちんと手入れしていたからでしょう。18世紀の造作が多く残っており、ルイ15世様式と一緒にルイ14世様式の暖炉も複数あって......最高でした!」