AIエージェントの事例5選、ウォルマート、NEC、NTTデータの“面白い活用法”を解説
企業事例(3):NTTデータの「次の時代のSIer論」
従来の生成AIは個別のタスクに対する対応を得意とし、その前後の段取りや準備などを自律的に行うことはできなかった。NTTデータはこの部分を技術開発し、自律的にそのタスクの前段階の段取り(日程調整・連絡実施等)を行い、複数のタスク結果を総合して目的を遂行する「デジタルレイバー型」へと深化させる取り組みを進めている。 また同時に、AI同士の連携を促進するために、AIエージェントの回答の信頼性を評価する技術も開発中だ。お互いの回答を評価できるようになれば、AIエージェント同士がコミュニケーションを通じて目的達成の近道となるプロセスを導きやすくなる。 エージェント同士のコミュニケーションを通じた業務変革(Smart Agent)を実施するための構成要素は下記の通りだ。 (1)自律的なタスク組立と特化エージェント/デジタルワーカーへのタスク割振するパーソナルエージェント (2)単純・定型タスクを実施するデジタルワーカー (例:住友生命/従業員との会話でパーソナルエージェントがタスクを理解し割り振り、デジタルワーカーが個々人に最適化されたメールを生成・自律送付) (3)専門知識を持ってタスクを検討する特化エージェント (例1:東京ガス/ターゲット定義・ペルソナ策定・ジャーニーマップ作成など一連のマーケティング業務を行うマーケティングエージェント) (例2:ライオン/暗黙知である生産技術領域の知見を有し知識伝承を行うエージェント) (4)AI同士が協調するコミュニケーション (例:マルチエージェントシミュレーション:生成AIに個別のペルソナや専門知識を与え、生成AI同士が会議し価値を創出) これまでNTTデータのようなSIerは、顧客の個別システムの開発や、ソリューションの導入を支援するビジネスモデルが中心であった。しかし、AIエージェントが作る未来に先回りして事業展開を進めることで、これまで以上に、大きな価値を提供できるSIerに変貌できる可能性がある。 NTTデータでも、業務AI化に向けた伴走コンサルティング型の支援や、業務AIエージェントソリューション展開、AIエージェント型オペレーションのBPO型受注など、生成AI時代のビジネスモデルへと大きく変革する構えだ。 ここまでは、タスクやオペレーションを自動化するAIエージェントについて触れてきたが、ここからは、さらに進んだ姿として「AIエージェント同士が相互関与・交渉するような事例」を紹介したい。