領内クルスク奪還へ焦りを強めるプーチン大統領、侵攻から3年にらみ2024年末に北朝鮮から追加派兵も
つまり、この計算は、前述した、首脳会談直後に流れた、派兵の最終的な規模に関する情報と数字的には符号するのだ。 プーチン氏からすれば北朝鮮の派兵部隊投入という奇手を打ってでも、奪還を急がねばならない事情がある。 それは何か。プーチン氏の脳裏には、ある日付が大きく点滅し始めたとみている。侵攻開始から丸3年を迎える2025年2月24日だ。できれば、その日に向けウクライナに対する戦場での勝利を宣言したいところだろうが、現在の戦況ではそれは極めて現実的ではない。
そこでプーチン氏としては、ウクライナ軍によるクルスク州の軍事的占領という最悪の屈辱的状況だけでも解消して、何とか丸3年の記念日を迎えたいと思っているはずだ。 2月24日の後、5月9日には最大の国家行事である対独戦勝記念日も控えているのだ。このままでは2014年のクリミアの軍事併合などから「戦争で必ず勝つ大統領」との支持を国民から得ていたプーチン氏としては、占領された領土を取り戻せない指導者となり、面目丸つぶれだ。
こうした日程をにらみ、プーチン氏の焦りは深まる一方だろう。これは最近のロシア軍の東部ドネツク州での攻勢ぶりにも端的に表れている。 ドネツク州各地でロシア軍はウクライナ軍から小都市や集落を次々奪い、占領地を拡大している。執拗に肉弾突撃を仕掛けてくる消耗戦戦術にウクライナ軍側も疲弊し始めているといわれる。 この攻勢も侵攻3周年日をにらみ、軍事的戦果の誇示を狙ったプーチン氏の号令を反映したものだろう。
■アメリカが情報戦で後れを取った理由 では、今回の派兵問題をめぐる情報収集でなぜ、アメリカがウクライナや韓国に比べて大きく遅れたのか。その最大の理由は、インテリジェンスの世界でヒューミントと呼ばれる、人間を介した情報収集網をアメリカがこの地域で持っていなかったためといわれる。 これと対照的に極東に優秀なヒューミント網を持っていたのはウクライナだ。ウラジオストクなどに北朝鮮部隊が続々到着したことを地元で組織された住民スパイ組織が察知し、キーウに通報したと言われている。今後も、北朝鮮の追加派兵があれば、ウクライナの情報機関がいち早く察知するだろう。