城氏が語る3戦未勝利のU-23代表「問題は選手のコミュニケーション不足。森保監督解任でも交代効果は期待できない」
確かに不運な笛はあった。 前半49分。田中碧が倒したアブドゥリサグへのプレーに対して、VARが適用され、田中にレッドカードが出された。田中がボールに先に触っていた。ジャッジは、足裏で危険なプレーをしたと判断したのだろうが、故意のプレーではなく考えられない判定だった。10人となった日本は、4バックにシステムを変え、小川航基が先制ゴールをマークした。しかし、直後の後半30分に齊藤未月のファウルでPKを取られた。ここも先にボールに触ったのは齊藤で、逆に齊藤が、その足を後ろから蹴られて相手が勝手に転倒しただけ。だが、この2つの信じられない判定に対して日本は、それほど抗議をしていないように見えた。たとえ判定は変わらないにしても、もっとベンチも含めて大騒ぎして抗議していい。勝利への執念が見えないのだ。今大会を象徴するようなシーンだった。サウジアラビア、シリアに連敗してグループリーグ敗退が決まっている中で、チームの雰囲気も「何をやってもうまくいかない」とネガティブだったのだろう。マイナスの連鎖が、流れとなってしまうのがサッカーの怖さである。 不運な形で1-1のドローに終わり、U-23代表は、東京五輪に向けて最後の公式戦となるAFC U-23選手権で1勝もできなかった。今大会を通じて表面化した問題点は、この試合でも解消されていなかった。とにかくチームに連携がない。ボールは保持して横へはゆっくりと回すことはできるが、なかなか縦にボールが入っていかない。ワントップの小川が受けることができてもサポートがなく孤立。仕方なくボールを下げる場面もあった。 相馬勇紀はスピードがあるので、個の能力で右サイドを突破して何度かチャンスを作った。クロスを入れたが、ゴール前に詰めてきた選手は1枚だけ。途中、2枚になったが、ニアか、ファーか、中央か、どこをターゲットにしているのかが見えなかった。相馬の早いクロスに誰もタイミングを合わせていないシーンもあった。バラバラなのだ。 サウジアラビア、シリア、カタールと、いずれも引いて堅く守られたが、それを組織で崩すシーンは、ほとんど見られなかった。アジアのレベルが上がっている中で個の力だけでは通用しないのである。