なぜいま若者に「マツダ・ロードスター」が人気なのか? クルマの愉しさも最新の安全性も妥協しないのが今風の選び方。
高性能すぎるスポーツカーはナンセンス
私は7年間にわたってND型ロードスターを愛用し続けているが(現在のクルマは2台目の2020年式)、全く飽きることなく乗るたびに運転の歓びを味わうことができている。これまでポルシェに長い間乗っていたのだが、性能が高すぎて運転を楽しめる道が少なく、ロードスターに乗った瞬間に目から鱗が何枚も落ちたのだった。 公道で運転を楽しむにはパワーのありすぎはダメで、軽量で小さいことの方が愉しさに直結するのだ。それにロードスターのサスペンションは前ダブルウィッシュボーン+後マルチリンクで、ポルシェ・ボクスターの4輪ストラットよりコストと手間がかかっており、調整できる要素も多いのだ。 今のクルマに全く不満はないが、昨年秋に発売された改良型ロードスターを二日にわたって借りだしてみた。エンジンもステアリングフィールも改善されていることはわかったが、基本的な魅力は私のクルマでも全く見劣りはしない。 新型で一番魅力を感じたのはアダプティブクルーズコントロールが装備されたことだ。私のクルマにもクルーズコントロールはついているが、ただ一定速で走るのみで先行車に合わせて速度調整してくれないのでよほど空いている道でないと使う機会がない。 それが新型では装備されているので退屈な高速道路の運転などでは楽ができるし、豪雨時など視界が悪い時の安心感も高まる(カメラだけでなくレーダーで前車との間隔を見ているので適切な車間を保ってくれ、必要であればブレーキもかけてくれる)。他の安全装備もほぼ最高レベルで揃っている。 つまり最新のロードスターは古典的なクルマの愉しさと最新のクルマの安全性と快適性を兼ね備えたクルマなのだ。クルマ好きの若者はそういうロードスターを「発見」して選んでいるのだろう。
文=山崎 明