なぜいま若者に「マツダ・ロードスター」が人気なのか? クルマの愉しさも最新の安全性も妥協しないのが今風の選び方。
「マツダ・ロードスターが“若者に”売れている」とモータージャーナリストの山崎 明氏は指摘する。若者のクルマ離れが叫ばれる昨今、まさかのスポーツカー。マツダ・ロードスターはなぜ若者を惹きつけるのか。 【写真】若者はロードスターの新構図。なぜ売れている?
売上も好調のロードスターを購入するのは誰か
マツダ・ロードスターが売れているという。現行のND型は2015年発売だから、もう9年目になり、普通ならモデル末期といっても良い状況にもかかわらずだ。今までのロードスターの歴史を見ても、最初のNA型の生産期間は9年、NB型は8年、NC型は10年だからまさにそろそろモデルチェンジのタイミングである。しかしマツダは昨年秋に大がかりなマイナーチェンジを実施し、今年1~4月の販売台数は4516台で、前年同期の3194台を大きく上回っている。それどころか、ND史上最高の販売台数だった2022年の1~4月の数字(3796台)をも上回っている。 通常、クルマは発売直後にたくさん売れ、徐々に販売台数は低下していくもので、スポーツカーは特にその傾向が顕著だった。例えばNC型ロードスターは発売2年目がピークで4067台を売ったが、8年目以降は1000台を割り込んでいる。それがND型では1年目の8418台に対し、8年目の2022年にそれを越える9567台を売っているのだ。2023年は落ち込んだものの、今年は前述したとおり2022年を上回るペースの売れ行きとなっている。ロードスターの下取り価格も高くなっているらしいので、中古の需要も高まっているのだろう。 単に販売が好調なだけではない。販売の傾向も変化している。私が20代だった1980年代はスポーツカーといえば若者のクルマというイメージだったが、近年では経済的に余裕があり、複数保有が可能な中高年層が多くを占めるようになっていた。1980年代はデートにはクルマが必須というのが男女共通の認識で、かっこいいスポーツカー、スペシャリティカーがもてはやされていたのが、近年は若者であっても実用本位の車選びをする人が主流となり、都市部ではデートにクルマは必要でないとする若者がほとんどになっているからだ。 実際ロードスターも2020年のデータでは60代以上が23%、50代が35%、40代が27%と40代以上が85%を占めるという状態だった。20代は9%、30代は6%と少ない。それが2022年になると20代が17%、30代が13%とかなり増加しているのだ。この傾向は2023年以降も変わらないそう。販売台数も増加しているので、ロードスターを新車で購入している若者の絶対数が増えているということだ。 このトレンドはトヨタのスポーツカー、GR86でも同様のようだ。現行のGR86(2021年発売)の販売に占める20代の割合は30%とロードスターを越える若者比率なのである。GR86のリアシートは狭いものの4人乗ることができ、リアシートを倒せば荷物も結構積めるのでファーストカーとして選びやすいのが理由だろう。