なぜいま若者に「マツダ・ロードスター」が人気なのか? クルマの愉しさも最新の安全性も妥協しないのが今風の選び方。
ロードスターにクルマの愉しさを求める若者たち
さらに興味深いのはMT比率で、ロードスターのソフトトップでは82%がMTなのだ。GR86も70%がMTだが、年代別で見ると20代は80%がMTを選んでいる。ロードスターでも2023年のデータでは20代のMT比率が一番高くなっている。つまりMTのスポーツカーを買う若者が増えている。 (データはマツダおよびトヨタガズーレーシング提供) 今の日本の自動車市場全体のMT比率は1%程度らしいので、この2車のMT比率は異常な濃度である。いったいこれはどういう現象なのか。これはクルマに限ったことではないが、もはや昔のような世の中全体でのマクロの流行というものはほとんど存在せず、局所的に非常に濃い濃度でのトレンドが発生しているということだと思う。 モータースポーツの世界でも、以前はフジテレビが地上波で生中継を行ったことでF1の大ブームが起きたが、現在は有料放送でしか見ることができないにもかかわらず鈴鹿サーキットの観客数は一時より増えており、新しい若いファン層も増えている。 クルマに関しても、クルマを単なる移動手段として見るのではなく、積極的にドライビングを楽しもうとする人が絶対数は多くないものの増えているのだと思う。スピードを出すことに限界のある公道でクルマとの積極的な対話を楽しむのであれば断然MTである。MTの変速を本当にスムーズに行うのは結構難しく、シフトダウンなどきれいに決まった時は快感であり、ATでは絶対に味わえない世界だ。 最近のクルマの世界ではCASE(C=コネクテッド、A=オートノモス=自動化、S=シェアリング、E=エレクトリファイ=電動化)といったことが叫ばれ、好きなクルマを保有して能動的に運転を楽しむといった伝統的な形態がどんどん縮小するといわれているが、そういう時代だからこそ、より積極的に自動車を操る愉しさを享受したいと考える人も増えているのではないだろうか。最近の新型車では本当に自分が操っているという快感を味わえるものは少ない。 ロードスターやGR86だけでなく、最近では1980~90年代の旧車の価格も高騰しているが、高年齢層のノスタルジック需要だけでなくあえてこういう古いクルマを積極的に選ぶ若者も増えているらしい。実際、最近の旧車イベントに行くと多くの若者を目にすることが多い。逆にいうと、ロードスターやGR86は旧車のドライブ感覚を新車で味わうことのできる貴重な存在なのである。