岡山「森の芸術祭」 鍾乳洞・渓谷・城下町を舞台にアート体験、世界のアーティストが集結
岡山県北部の12市町村を舞台にスタートした「森の芸術祭 晴れの国・岡山」が2024年11月24日まで開催されている。アートディレクターは日本を代表するキュレーターの一人である長谷川祐子。世界的アーティストから新進の若手まで、12の国と地域の42組43名のアーティストの作品が展示されている。 【写真はこちら】「森の芸術祭 晴れの国・岡山」、記事で紹介している作品の写真はココからチェック! 岡山でアートというと、県南部は瀬戸内国際芸術祭との関連もあって盛んだが、今回作品が展示されているのは県北部の奈義町、津山市、鏡野町、真庭市、新見市。渓流、洞窟などの豊かな自然、城下町などが会場となっており、それらを下敷きにした歴史や文化が作品のソースにもなっている。 長谷川はこれまで海外でさまざまな国際展をディレクション(指導・管理)してきたが、国内ではこれが初めて。今回のコンセプトは「『森』がもたらす『恵み』を芸術の力で未来に向けて活性化することを目的とし、『本当に必要な資本とは何か?』を問いかけます」としている。ここでは芸術祭好きのアートライターである著者が特におすすめの作品を紹介する。
■アートと建築の融合を堪能 奈義町現代美術館
岡山県北部のアートの拠点として重要な奈義町現代美術館は、世界的建築家である磯崎新が設計した体感型美術館。ここは荒川修作+マドリン・ギンズ、岡崎和郎、宮脇愛子の3組のアーティストそれぞれの作品に合わせて造られた空間で、アートと建築の高次元の融合を堪能できる。それらの常設作品を体験するだけでも価値があるのだが、この芸術祭の会期中はそこに特別な展示が加わっている。 常設作品の一つである宮脇の《大地》は水盤の上にステンレスワイヤを張り巡らせたものだが、今回そこに重ねてしつらえられたのは、音楽家の坂本龍一とアーティストの高谷史郎によるビデオ&サウンドインスタレーション。氾濫する水のスロー映像が映し出され、能笛の音が鳴り響き、《大地》と共鳴する本作は、芸術と自然の関わりを強く意識させる。 2022年、奈義町に滞在し、ここで見る空の広さや、山地独特の雲の動きに魅せられたというAKI INOMATAは今回、グラスに前日の空模様を再現する作品を制作。水の中に3Dプリンターで模(かたど)られた雲は時と共に形を変え、消えていき、自然や日常のうつろいやすさやかけがえのなさを想起させる。 俳優やダンサーとして知られる森山未來は、奈義町の芸能や祭りが地域のコミュニティーを強化している点に着目し、この町の巨人伝説をもとにしたパフォーマンスイベント《さんぶたろう祭り》を開催。そのアーカイブ映像が館内の休憩室で展示されている。また館内ギャラリーでは磯崎による建築とアートに関わるさまざまな取り組みを紹介するアーカイブ展も行われているので、こちらもチェックしたい。 奈義町現代美術館近くの屋内ゲートボール場「すぱーく奈義」では、レアンドロ・エルリッヒが森のインスタレーションを制作。天井から300本もの木がつるされ、つり橋の下には鏡が張られている。橋を渡ると妙な浮遊感に包まれ、自然の原初的な存在が新鮮に感じられる。