「やっぱり、作家ってすごい…!」担当編集が驚愕した…「”現役最強”の歴史・時代小説家の異能」
『羽州ぼろ鳶組』シリーズ (第6回吉川英治文庫賞)、『じんかん』(第11回山田風太郎賞)、『塞王の楯』(第166回直木賞)など、数々の話題作を世に送り出し、いま最もアクティブで、ホットな歴史・時代小説家と言える今村翔吾さん。そんな今村さんの最新刊が『イクサガミ 人』です。『イクサガミ 天』、『イクサガミ 地』と続いたシリーズ待望の第3巻が刊行されました。 「村上春樹」と「サザンオールスターズ」の“意外な共通点” 今回は前編『【『イクサガミ』誕生秘話】「もう、この手は禁止!」超多忙の今村翔吾から原稿を掴むため担当編集がやった「意外なこと」』に続いて、『イクサガミ 人』の見どころを担当編集の竹内さんにお聞きしました!
担当編集の推しキャラは?
――明治×デスゲームというのは今村さんご自身で温めていた題材だったのですね。 私も今村さんも「週刊少年ジャンプ」のファンで、当時は『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』が大人気でした。毎週「ジャンプ」を楽しみに読むみたいに、構えず時代小説を若い人に楽しんでもらいたいとお話をしていました。 新シリーズのご執筆をお受けいただいたあと、すぐ冒頭の30枚くらいの原稿を頂戴したんです。最初の侍たちが京都の天龍寺に集められる場面でした。冒頭を読んで、これは若い人にも届くと確信しました。物語の引力が並々ならぬもので、エンタメ超大作の予感がする書き出しだったんです。 ――主人公の愁二郎や双葉、彼らと同盟を組む響陣、そして敵側にも因縁深い無骨、幻刀斎など枚挙にいとまがないほど、魅力的な人物が次々に登場します。 今村さんの頭の中に292人全員のプロフィールが入っているそうです。作中で登場しない人物でも、名前や出身地、使う武器、戦う理由などが決まっているとお聞きしています。 一つ印象的なエピソードがあります。直木賞を受賞し尋常でない忙しさになった今村さんは多数の取材を受けながら、7~8本の連載を抱えてらっしゃった。そんな中で第2巻『地』の執筆を続けていただきました。そのせいか、たまに原稿で誤ってご自身の他作品の登場人物名になってしまっている箇所があって。多数の作品を並行して、凄まじい執筆量をこなす今村さんならではですよね。 ――そんなこともあるんですね…。本作の大きな魅力といえば、「デスゲームだけじゃない」こと。同じ釜の飯を食い育ち、ともに「京八流」を修めた愁二郎の兄弟たちも蠱毒に参加していて、デスゲームが進むにつれて彼らの運命も絡みあっていきますね。皆が皆、「戦う理由」「プライド」を持っていますが、その人物の掘り下げが本当に絶妙ですよね。 ありがとうございます。292人の参加者が京都から東京を目指す壮大なロードノベルなので、ストーリーを進めることを優先して、一番最初の原稿の段階では登場人物の過去を掘り下げるパートは多くなかったんです。だけどやっぱり一人一人があまりに魅力的だったので、短くでも彼らの過去を入れていただきたいとお願いしました。 ――そうだったんですね。だから『イクサガミ』はただのアクションだけじゃない深みがある。担当編集の立場から「推しキャラ」を挙げるとしたら、誰でしょうか。ぜひ聞きたいです! それは迷ってしまいますね(笑)。強いて言うなら、『天』の終盤で敵として登場し、以降は行動をともにするようになった狭山進次郎でしょうか。最初はただ生きるために愁二郎たちと行動しています。その頃はおどおどしていて頼りない印象でしたが、『人』では大活躍します。銃に詳しく、意外と機転が利いて…。ぜひ彼の成長ぶりを楽しんでいただきたいです。今村さん自身も、まさかここまでたくましくなるとは思っていなかったそうです(笑)。