映画評論家 森直人が選ぶ 年末年始に観てほしい! 2023年公開映画の傑作5選【邦画編】
『エゴイスト』
エッセイストである高山真の自伝的な同名小説の映画化で、ゲイカップルのラヴストーリー。主演を務めるのは、来年(2024年)配信予定のネットフリックス映画『シティーハンター』で主人公・冴羽獠役を演じる鈴木亮平。今年はもうひとつの主演作『劇場版TOKYO MER~走る緊急救命室~』(監督:松木彩)が大ヒットしたが、彼の演技力の凄さを味わうためにはぜひこちらを観ていただきたい。 東京の出版社でファッション誌の編集者として働く浩輔というゲイの男性を演じるのだが、とにかくめちゃくちゃうまい。彼が“剛”だとすると、それを受ける“柔”は相手役の宮沢氷魚。このふたりのコンビネーションが本当に素晴らしく、国内外の映画祭などでも絶賛を受けている。鈴木は第22回ニューヨーク・アジアン映画祭2023 ライジングスター・アジア賞を、宮沢は第16回アジア・フィルム・アワードで最優秀助演男優賞を受賞した。 監督の松永大司(1974年生まれ)はかつて俳優としても活躍しており、『ウォーターボーイズ』(2001年/監督:矢口史靖)や『ハッシュ!』(2002年/監督:橋口亮輔)などに出演していた。『きのう何食べた?』の西島秀俊&内野聖陽が脱力日常系だとしたら、こちらの鈴木&宮沢はもっと熱っぽい。純粋に“役者を観る歓び”を堪能させてくれる名作だ。また宮沢の母親役を演じるエッセイストの阿川佐和子も素敵な存在感を見せている。
文=森直人 text:Naoto Mori