メルセデスAMG GT 詳細データテスト 高まった安定性 神経質さの残るハンドリング 低い静粛性
快適性/静粛性 ★★★★★★★☆☆☆
先代GTは、掛け値なしの猛獣だった。本質的にはV8ホットロッドで、そこに豪華なインテリアと、とくに後期モデルは驚くほど上質なハンドリングを持ち合わせていた。ロードマナーと呼ぶようなものには特別注意を払ってはいなかった、といえる。 その点、新型の提案するものは異なる。目指したのはより使いやすく、仰々しさをやや抑え、わかりやすいものの、先代の野性味がもたらす緊張感は薄めたクルマだ。 AMGはたしかに、より軟化したクルマをつくることには成功した。視界は改善され、ロードノイズは低くなり、キャビンはよりリラックスできるスペースとなっている。しかしながら、静粛性はもっと高めてほしいし、単純な2地点間移動ではサスペンションの過敏さを抑えてもらいたい。 胸がドキドキするような興奮を削ったわりには、穏やかさが十分に増したとは言い難い。サスペンションをコンフォートモードにしても、常に路面に対する不要な過敏さがある。ノイズについても、113km/hで74dBAというのは、高速道路でのキャビンのうるささで知られるポルシェ911ターボSと同等だ。 刷新されたシャシーと新たな狙いからすれば、もっと親やすいクルマになってもいいはずだ。
購入と維持 ★★★★★★☆☆☆☆
16万2105ポンド(約3112万円)というのが新型GTの最安値で、先代のような10万ポンド(約1920万円)程度のモデルはなくなった。それがあれば、ポルシェ911カレラGTSあたりの顧客層を取り込むこともできただろう。 テスト車は、これに2500ポンド(約48万円)相当のオプションが追加されていたものの、標準装備も充実の内容だ。816psのGT63 S Eパフォーマンスは17万7715ポンド(約3412万円)から。ライバルは、このクラスでわれわれがもっとも高い評価を与えているフェラーリ・ローマが18万5975ポンド(約3571万円)から、ポルシェ911ターボが15万9100ポンド(約3055万円)からだ。 価格は高いが、少なくとも4.0LのV8は、長距離走行では驚くほど経済的。クルージングでの実測燃費は10.9km/Lで、満タンでは750km以上走れる計算だ。ロンドンからル・マンまで無給油で行けるということになる。 荒れた路面や勾配のきついガレージへのアプローチも恐るるに足らず。地上高は極端に低くないが、ノーズリフトシステムも標準装備で、フロントのクリアランスを30mm上げることが可能だ。室内の装備も充実しており、ロードノイズが我慢の範疇に入るなら、GTカーの守備範囲は完全にカバーできる。