メルセデスAMG GT 詳細データテスト 高まった安定性 神経質さの残るハンドリング 低い静粛性
内装 ★★★★★★★☆☆☆
車内には、ちょっとした驚きや、初代GTのような特別感は影を潜めている。初代は、上下幅が狭い独特の前方視界が、背中のすぐ後ろにトランスアクスルの気配がある感覚と相まってエキサイティングさを高めていたが、もはやそれも過去の話だ。 高くて幅広く、多くのボタンが並んだ先代のセンタートンネルは、エルゴノミクス的に癖があったものの、それもまた特別感があった。新型は、それより低く、実用的になっている。シフトセレクターはコラムレバーへ移り、スイッチ類は大画面の縦型タッチ式ディスプレイへと組み込まれた。ただし、ステアリングホイールにも多くのスイッチが設置されている。 ドライビングポジションは上々だ。技術的には見慣れたもので、使いやすさは十分。ふんだんに使われたサテンクロームとツヤのあるカーボンの装飾は、いい感じにきらびやかだ。新たに与えられたリアシートはかなりアップライトだが、おそらく体格の小さい乗員でも短距離座るのがせいぜいだろう。 とはいえ、雰囲気は普通な感じというか、メルセデスらしいもので、特別感は薄い。高額で、驚くほど能力が高いフラッグシップにはふさわしいものだろう。 多少引き上げられたルーフ高は、ヘッドルームの拡大に寄与している。さらに明るさと開放感を高めているのガラスルーフだ。荷室は、スポーツカーとしては広い。リアシートを倒せば、321Lから675Lへ拡大できる。PHEVのGT63 S Eパフォーマンスでは、リアの電動ドライブユニットにより、積載容量が目減りする。
走り ★★★★★★★★★☆
このホットVレイアウトのV8は、GクラスからCクラスまでさまざまなクルマに積まれ、10年にわたってAMGを支えてきた。しかし、おそらくもっとも刺激的なのは、キャビンがリアに寄ったスチームパンク的で背が低いクーペのノーズに収まったときだろう。 まず、野太く気だるいエキゾーストノートや、出し惜しみしない過給から想像するより、レスポンスははるかにいい。懐の広さも驚くほどで、鍛造クランクは信じられないくらい低い回転域からよく回り、スムースに推進力を増していく。81.6kg-mの最大トルクは2500rpmにも満たないうちから発生し、重いクルマを軽々と動かす。 そこからこのV8はすばらしいリニアさを示し、エキゾーストノートはハードになり、7000rpmのレッドラインで最高潮に達すると、DCTのようにキレがよく鋭いシフトアップをみせる。シフトの激しさをはじめ、スロットルペダルのシャープさやエキゾーストノートの騒がしさ、オーバーランした際の芝居がかったような激しい振動と音は、例によってエコからレースまでの走行モードによって変化する。 そのフィルターのかかっていない楽しさには、内燃機関が発する昔ながらの魅力的な音が存分についてくる。数字的にも、思ったより悪くない。ローンチコントロールを用いた0-97km/h加速は3.1秒で、後輪駆動だった先代のスペシャルモデルであるGT Rより0.5秒速い。 中間加速もかなりのもので、3速での64-97km/hはたったの1.5秒、48-113km/hは2.7秒に過ぎない。ポルシェ911ターボSがいるこのクラスでは最速とはいえないが、それでも上位に位置する速さだ。ちなみに、よりピーキーなポルシェは、ゼロ発進から2.5秒で97km/hに達し、4速での64-97km/hは1.4秒。2速ではなんと1秒フラットだ。 ブレーキについても、特筆すべきものがある。ペダルはリニアでカッチリしており、ABSの介入はほとんど感じられない。なお、ブレーキテストの制動距離は、通り雨があった後に計測したものだ。