先端半導体、回路微細化の決め手「EUV」 東京応化や信越化学などが材料投資を加速
半導体材料メーカーが、回路の微細化に欠かせない次世代露光技術「EUV」(極端紫外線)向けの設備投資を加速している。生成AI(人工知能)の拡大などを背景に、半導体の高性能化が求められており、回路の微細化が一段と進展。回路パターンをシリコンウエハーに転写する露光技術で、13.5ナノメートルと極端に波長が短いEUVの注目度は増すばかりだ。東京応化工業や三井化学、信越化学工業などが関連材料で「攻め」の投資戦略を打ち出している。 【関連写真】三井化学が増産に乗り出したフォトマスク用防塵カバー「EUVペリクル」 露光工程では、EUVを光源とすることで数ナノメートルの回路パターンをウエハーに形成できる。EUVは、7ナノメートルプロセス世代以降の半導体製造に不可欠なものとして実用化が進み始めた技術で、今後の成長領域と材料各社は見込む。 こうした状況を受け、東京応化工業は、フォトレジスト(感光材料)の生産能力を引き上げるため、郡山工場(福島県郡山市)に新製造棟を建設する。国内最大のフォトレジスト製造棟で2024年度下期の着工、26年度下期の稼働を予定する。 三井化学は、EUVペリクル(フォトマスク防塵カバー)の製造設備を岩国大竹工場(山口県和木町)に導入する。25年12月の完工を予定し、年産5000枚の生産能力を整備する。次世代露光用CNT(カーボンナノチューブ)ペリクルの開発を進めており、25年度には透過率92%以上で耐光性にも優れる次世代品の事業化を目指す。26年度にはCNTペリクルの透過率を94%以上に引き上げる計画だ。 三菱ケミカルグループは、フォトレジスト用感光性ポリマー「リソマックス」を増産するため、三菱ケミカル九州事業所・福岡地区(北九州市)で、ArF(フッ化アルゴン)用に加え、EUV用のリソマックスの量産設備を導入する。増強により、ArF用リソマックスの生産能力を2倍以上に拡大するとともに、EUV用でも同社初となる量産を25年9月から開始予定だ。 AGCは、子会社のAGCエレクトロニクス(福島県郡山市)で、EUV露光用フォトマスクブランクスの増産投資を行い、今年1月から稼働を開始した。今後、段階的に増強し、生産能力を従来比で約3割増やす。EUVマスクブランクス事業で25年には400億円以上の売上高を目指している。 信越化学工業は今春、半導体露光材料で4カ所目の新たな生産工場を群馬県伊勢崎市に建設することを決めた。第1期の投資は26年までの完工を予定し、事業用地取得も含め約830億円を投資する。同社は、1997年にフォトレジスト事業を立ち上げ、KrFレジストの生産を開始。その後、フォトマスクブランクスやArFレジスト、多層膜材料、EUVレジストなどの露光材料を事業化してきた。
電波新聞社 報道本部