5か月の営業停止もリストラせず コロナ禍と向き合う木下大サーカスの「鉄則」
コロナ禍を乗り越えつつあることと同時に、娯楽の多様化と細分化が急速に進む現代において、アナクロなサーカスという娯楽が今も繁栄を維持していること自体が驚きである。 看板団員のうちの1人で、空中ブランコを得意とする柳川陸(24)がその理由をこう分析する。 「映画とかじゃなくて、生で、人間がすっごい危ないことをしているのを見るって、おもしろいんでしょうね。人間って、ハラハラしたいもんじゃないですか。僕も毎日やっているのにいまだに毎回ビビってますから」
木下大サーカスには目隠しをして空中ブランコをする「目隠し飛行」という伝統の技がある。今、それができるのは柳川だけだ。また、名物の一つとして、ライオン5頭と人が一緒の檻の中で行う猛獣ショーもある。 命をかけたエンターテインメントが退屈なわけがない。木下大サーカスは、もはや日本の伝統芸能である。 極上のスリルを提供し続けてきた木下大サーカスは来年、120周年を迎える。
--- 中村計(なかむら・けい) 1973年、千葉県船橋市生まれ。同志社大学法学部政治学科卒。ノンフィクションライター。某スポーツ紙を7カ月で退職し、独立。『甲子園が割れた日 松井秀喜 5連続敬遠の真実』(新潮社)で第18回ミズノスポーツライター賞最優秀賞、『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇』(集英社)で第39回講談社ノンフィクション賞を受賞。近著に『金足農業、燃ゆ』(文藝春秋)、『クワバカ クワガタを愛し過ぎちゃった男たち』(光文社新書)。この秋から三浦半島への移住する。好きなユーチューブは「観音崎自然博物館 どたばた学芸チャンネル」、「笑い飯西田のいきいきチューブ」。