「このチームでもう一度…」残留を決断した“秋田の心臓”中山拓哉…ホーム開幕は「アリーナを熱狂させる」
アウェーでの4試合を2勝2敗で終えた。満足できる結果ではないが、秋田ノーザンハピネッツは確かな手応えをつかんだ。 「りそなグループ Bリーグ2024-25シーズン」の開幕戦は、川崎ブレイブサンダースに73-81で敗戦。第2戦は21点差をつけて大勝すると、サンロッカーズ渋谷との初戦にも勝利。続くGAME2では71-78で敗れたものの、最大16点ビハインドから一時逆転までこぎつけた。 「川崎さんとの1戦目は自分たちのやりたいバスケットが出せなかったです。けど、そのあとの3試合は出せているので、これからもっとクオリティを上げていきたいと思います」。SR渋谷との第2戦後、中山拓哉はそう口にした。 「この3試合で僕たちがやらなければいけない方向性は明確に出たと思っています」と、前田顕蔵ヘッドコーチも確かな感触を得たようだ。今シーズン、秋田が目指すスタイルについて指揮官はこう続けた。 「(今までどおり)このリーグの中で圧倒的にプレッシャーのある、攻めるディフェンスをすること。課題はオフェンスです。そのディフェンスを前面に出しながら、今シーズンは個々の強みをどう当てこんで効率のいいバスケットができるかを目指したいです」 今シーズンは長谷川暢(茨城ロボッツ)、藤永佳昭(富山グラウジーズ)という2人の司令塔がチームを去った。そのため、ポイントガード兼シューティングガードの中山が攻撃をコントロールする場面が増え、「オフェンスの部分でチームをうまく回すことは昨年より意識してプレーしています」と本人も口にする。実際、SR渋谷戦では、ティップオフの1時間以上前にも関わらず中山が前田HCからオフェンスの指示を受けている場面も見られた。 鋭い読みでスティールを奪い、攻守において強靭なフィジカルを発揮する中山はポイントガードを本職とする選手ではない。しかし、プロ入り後はプレーの幅を広げ、前述したように今では攻撃の組み立て役を務めるようになった。 そんな中山に大きな影響を与えた人物がいる。10月10日に自身のSNSを通じて現役引退を表明した伊藤駿だ。生粋のポイントガードだった伊藤は、2019-20シーズンから4シーズンにわたり秋田でプレー。中山は伊藤との思い出をこう語る。 「僕はポイントガードタイプではないんですけど、駿さんは司令塔としていろんな目線を持っていましたし、コートではどんな風に考えているのかといった『ポイントガードとは何か』ということをたくさん学びました。それこそ、今はポイントガードで試合に出る機会も多いので、駿さんと一緒にプレーできたことは僕のキャリアの中でも大きかったと思っています」 クラブ2度目のチャンピオンシップ出場を狙う今季は、中山にとっても勝負の1年になる。昨シーズンは序盤に全治6週間のケガを負い、出遅れた。「試合に出れなくて悔しいというか、 苦しいというか、チームの力になれなかったです。ただ、その中でもチームを俯瞰的に見れて、学べる部分もたくさんありました」。 今年7月には30歳の誕生日を“秋田”で迎えた。昨シーズン終了後、チーム一筋の生え抜きプレーヤーは「30歳になる年でもあったので、自分の中でいろんなことを考えた」という。悩んだ末に出した答えは、今シーズンも秋田でプレーするということだった。 「このチームでもう一度CSに出たいですし、やっぱり『秋田で頑張ろう』という思いが一番強かったです。この選択が正解だったと言えるように、僕自身、これからもチームが勝つためにやっていきたいなと思います」 今週末、秋田はいよいよホーム開幕を迎える。「ブースターの皆さんと会場を盛り上げて勝つのが一番嬉しいことなので、そのためにも僕たちのバスケットを見せて、アリーナを熱狂させられるように頑張ります」。 あきたにはBがある。あきたには熱狂的なクレイジーピンクがいる。あきたには、“秋田の心臓”と呼ばれる中山拓哉がいる。 文=小沼克年
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