デ・ゼルビが起こした革新と新規軸。ペップが「唯一のもの」と絶賛し、三笘薫を飛躍させた新時代のサッカースタイルを紐解く
ダブルボランチがそろって近い距離にポジショニングを取り…
相手が誘い込みたいサイドの逆をとり、相手が力を注ごうとするベクトルの矢印を折る。一度ボールを止めるということは相手の動きも止めることになる。動的優位性がない状態を一度自分たちで作り出す。ブライトンの選手は0から一気に100へとギアを上げることが習慣づいており、相手が動き出してからギアを上げようとするより圧倒的に素早く次のプレーへと移行していく。だからわかっていてもなかなか止められないし、一気に自分たちの動的優位性を高めることができるというわけだ。 ギアを上げたらそれを高いスピードでキープするために、非常に精度の高いワンタッチパススキルが選手には求められる。相手が体勢を整え直す前に、一気にゴールまで強襲するのが一番効果的だからだ。 また三笘のようなドリブラーをサイドに配置する以上、彼らがその能力を最大限生かせる状況を作り出せたほうがいい。オフェンシブな選手が自分から仕掛けやすい状況とはどんなものだろう? 相手に密接マークを受けているよりも、ある程度スペースがある状況でボールをもらえたほうが仕掛けやすい。ではどうすればオフェンシブな選手がよりスペースがあって、ボールをもらえる状況を作れるのだろう? シュリッツはこのように分析する。 「ブライトンではダブルボランチが守備ラインに近いところで距離を短く保ちながらポジショニングを取ることが特徴的ですね。センターバックがボールを持った時には同サイドのボランチは離れてスペースを作り、逆サイドのボランチやインサイドハーフがボールをもらうために下りてくるというのが基本的なチーム戦術です。 デ・ゼルビサッカーではあえてダブルボランチがそろって近い距離にポジショニングを取ります。そうすることで相手守備を引き出し、オフェンスの選手が使えるスペースを広げるのが狙いなんです。ダブルボランチは相手のちょっとした動きに気を配りながら、少しの動き直しとコース取りでパス交換ができる状況を作り出し、そこから素早く前線の選手に正確で鋭いパスを展開します」