膵臓がんの早期発見へ、尿をAI解析…大学発のベンチャーが3年後の承認目指す
尿に含まれる微小物質・マイクロRNAのデータをAI(人工知能)で解析することで、膵臓(すいぞう)がんを高い精度で検出できたとする研究成果を、慶応大や名古屋大発ベンチャー企業「Craif(クライフ)」などのチームが発表した。クライフは、この仕組みを応用した検査キットについて3年後の製造販売の承認を目指し、臨床試験を進めている。論文が国際医学誌に掲載された。 【図解】おしっこ「座る派」は男性の6割
マイクロRNAは遺伝物質の断片で、がん細胞があると種類や濃度が変わる。論文によると、膵臓がん患者と健康な人計462人分の尿を冷凍して集め、抽出したマイクロRNAの違いをAIに学習させて解析した。集めた尿のうち患者か健康の人かを伏せたグループで検証させたところ、77・8%の確率でがんを見つけることができ、がんではない人を正しく判定する確率は95・7%だった。
現在の膵臓がんの検査では、がん細胞で多く作られるたんぱく質「腫瘍マーカー」が血液に含まれていないかを調べている。だが、早期のがんほど検出されにくい。臨床試験では、早期の患者や膵臓がんリスクの高い慢性膵炎、糖尿病の患者ら計800人から冷凍した尿を集め、腫瘍マーカーを上回る精度があるか検証する。
マイクロRNAに詳しい落谷孝広・東京医科大特任教授の話「採血を要しない検査方法を確立できる可能性が示されたことは意義があるが、さらなる検証が必要だ」