【ニッポンの農業危機】2030年までに農業従事者は半減、農地も2割減に 東北地方の耕地面積を上回る規模が“消滅”する
“コメや果物が贅沢品”になる日が来るのか
食料の多くを輸入に頼る日本は国際情勢の影響を受けやすく、食料品の値上げラッシュの先が見えていない。こうした状況下で国内生産が縮小したならば、食料品価格はさらに高騰するだろう。いまにコメや果物は庶民にとって“贅沢品”となるかもしれない。それどころか、コメは主食であるだけに食糧危機まで懸念しなければならなくなる可能性さえある。 なぜ土地利用型作物は、かくも減る見通しとなってしまったのだろうか。 土地利用型作物は面積あたりの収益性は低いが、農地の集約を図りさえすれば生産性の向上が見込める。農水省のデータでコメに関する生産コストと所得の割合をみてみると、15~20ヘクタール以上になると所得が生産コストを上回るようになる。これは、利益を上げるには最低でも15~20ヘクタール以上の農地が必要ということである。50ヘクタール以上となれば所得が跳ね上がるように増える。 日本の場合には農地が分散して小規模になっているというケースも少なくないが、生産性向上のための手立てが分かっているのだから実行に移せばいいだけの話とも思える。それでも土地の集約が進まない背景には、人口減少と就業者の高齢化の影響がある。
土地の集約が進まない背景にある少子高齢化
土地利用型作物に関して、今回の推計における経営体の予測を実数で見ると、準主業経営体・副業的経営体が50万から22万へ減ることが全体の数値を押し下げた。これに合わせて、準主業経営体・副業的経営体の耕作面積は80万ヘクタールから36万ヘクタールへと大きく減る。主業経営体も84万ヘクタールから40万ヘクタールへと激減する見通しだ。 副業的経営体は70代以上が72.2%、60代が26.4%と全体の98.6%を占めている。準主業経営体も70代以上が40.5%、60代が31.7%と計72.2%となっており、50代以下は27.8%に過ぎない。 コメの場合は準主業経営体と副業的経営体が48%、果樹類では47%と割合が大きく、その多くが60代以上ということだ。 これらの数字からは、若い世代への代替わりが進まず将来展望が開けないため、土地集約に向けた一歩がなかなか踏み出せない事情が透けて見える。 若い世代への引き継ぎが進まないのは、いくつもの要因が重なってのことだが、少子化でそもそも継承する若者が少なくなったことが大きな理由だ。 いまやどの職業も人手不足だが、農業の新規参入はとりわけハードルが高い。まとまった土地を必要とするなど初期投資にお金がかかる上、土地ごとに自然条件が異なって栽培ノウハウを身に付けるに時間を要する。家業を継ぐ親元就農(おやもとしゅうのう/農業経営主が三親等以内の親族)など、農業と何らかの縁がある人でないとなかなか難しい現実がある。 しかも親元就農の対象となる人自体が減っている。出生数の減少は基幹的農業従事者の夫婦においても例外ではなく、生まれた子どもがすべて家業継ぐわけでもないだろう。