テニス界第4の女、奈良くるみの可能性
ランキング、109位から78位へ
全米オープンテニスは女子決勝を終え、大会明けの世界ランキングが発表された。日本勢はクルム伊達公子が62位→63位のほぼ横ばい、全米オープンを欠場した森田あゆみが51位→60位と落とす中、躍進したのが全米3回戦進出で注目された奈良くるみだ。109位から78位へのジャンプアップ。「ずっと目標にしていた」という100位を切るどころか、親友でライバルの土居美咲の90位を抜き、上の2人も視界に捉える位置にきた。 全米オープンで奈良の試合を見ながらあらためて考えさせられたことは、〈戦略〉の重要性だ。錦織圭やクルム伊達を含めて本戦出場の日本勢5人のうち4人が1回戦で敗れる中、予選3試合を勝ち上がって全米初出場を果たした奈良は、1回戦で世界ランク73位、続いて22位、と格上相手に2勝。3回戦で敗れはしたが、かつて世界ナンバーワンに座ったエレナ・ヤンコビッチをきりきり舞いさせる予想外の展開で、ショーコートを沸かせた。 これまで奈良は、森田、伊達、土居の次…日本の女子のナンバー4の位置に甘んじてきた。というのも、小学生の頃から注目された才能の持ち主ではあったが、高校を出てプロになる頃も身長158センチと、テニス選手としては極端に小柄な体格で弱々しかったからだ。世界にも小柄な選手は多いが、小柄といっても163センチくらいはあるし、その中でも、たとえば元女王ジュステーヌ・エナンのようなパワーは奈良になかったし、中国のジェン・ジーほどのスピードもなかった。それでも、日本テニス協会ナショナルチームの村上武資・前監督、原田夏希コーチが奈良を支援し続けてきたのは、強化の戦略があったからだ。 日本人にはセリーナ・ウィリアムズのようなパワーは望むべくもない。脚力にしても、日本人には持久力はあるが、テニスではスプリント力も必要でそれは劣っていると言われる。ライジングショットを生み出す伊達のような感覚もまたきわめて稀な才能であり、真似をするのは難しい。村上氏らが目を付けた奈良の持ち味は、ボールコントロールの緻密さと忍耐力だ。女子テニスの場合、この二つを組み合わせ、打ち合いに対応できる体力さえ加えれば、トップは争えなくても十分世界に通用する――。奈良は、フットワークの向上にもっとも重点的に取り組んできたという。 「フットワークが良くなればミスが少なくなって、コントロールが生かせると思います」 また、「服もワンサイズ上がった」というほど大きくなった上半身にもトレーニングの成果が表れていた。