持続可能な林業経営へ新たな収益源確保する方法…森林の脱炭素や生物多様性保全に果たす役割を「見える化」
大分県日田市中津江村を中心に約1200ヘクタールの森林を所有、管理する田島山業（田島信太郎社長）が、本業の木材生産とは別に、森林の持つ多面的機能に着目した新たな収益源の確保に取り組んでいる。脱炭素や生物多様性の保全に果たす森林の役割を「見える化」することで、趣旨に賛同する企業などから資金を調達して持続可能な林業経営に役立てるという、これまでにないビジネスモデルの構築を目指している。（秋吉直美） 【写真】つるんと「皮むき間伐」森林を守る…樹皮を剥がれた木は数年で立ち枯れ、間伐しやすく
吸収したCO2を売却
田島山業は今年2月、自社の森林が吸収した二酸化炭素（CO2）の一部を国の認証制度に基づき、「J―クレジット」としてIT大手のLINEヤフー（本社・東京）に売却すると発表した。
J―クレジットは企業などが再生可能エネルギーの導入で排出を抑えたり、森林の適切な管理で吸収したりしたCO2を可視化して売買する仕組み。排出の削減が難しい企業は購入分の排出量を相殺できる。
田島山業は16年間、年換算で4000トン分の認証を得ており、LINEヤフーに年1500トン分を10年間売却する。海運大手の飯野海運（本社・東京）、住宅設備メーカーのサンワカンパニー（本社・大阪市）とも売買契約を結んだ。
売却可能なクレジットにはまだ余裕があるといい、早期の「完売」を目指す。田島山業によると、森林由来クレジットの現在の相場は1トンあたり1万～1万5000円。4000トンを完売できれば単純計算で年4000万～6000万円の収入になる。
今後も放置された森林を買い取るなどして整備を進め、クレジットを年1万トン分程度にまで増やす考えだ。田島大輔取締役（36）は「本業の木材生産とクレジット分を合わせ、5年後には全体の売り上げを2倍に引き上げたい」と話す。
生物多様性を守る
脱炭素に代表される気候変動対策と並び、種や生態系といった生物多様性を守る取り組みも世界の潮流になっている。同社は昨年、「みんなの森」と名づけた森林1・64ヘクタールが環境省の「自然共生サイト」に認定された。
