母の愛情とかけた手間 数々のお手製の洋服に感動の声 そして娘は和裁職人の道へ 「母から学んだものづくりの姿勢を貫いていきたい」
洋裁ではなく和裁の道へ「洋裁より厳しい世界だった(笑)」
そんな洋裁好きの母のもとで育った宮西さんですが、洋裁ではなく、和裁の道に進みます。和裁とは、着物や浴衣などの和服を仕立てる裁縫で、洋裁とは仕立て方が大きく異なりますが、その違いの一つとして、型紙を使わないという点があります。 洋裁ではなく、和裁を選んだきっかけについて宮西さんに尋ねました。 「和裁の道に進んだきっかけは、母が『洋裁は服によって型を取る必要があるため大変だから、和裁をやってみたら』と口にしたことです。そこで和裁の道に入ったのですが、洋裁より厳しい世界だったと思います(笑)」 「プロになれるかどうか、という厳しさではなく、なってから食べていけるかどうか、最低賃金にすらなっていない工料についてが主なことですが、どの道も、歩いてみないとわからないので、どちらが大変かについては比べてはいけませんね」と話してくれました。 国家資格である1級和裁技能士の資格をもち、個人向けの和服の仕立てや和裁講師として活動している宮西さんですが、和裁職人の今後については危機感を覚えているとのこと。特に職人の収入源である『お仕立て代(工料)』の下げ止まりについては課題だと考えており、いち職人としてできることを模索しているそうです。
和裁職人の今後について、思いを聞いた
「若い頃は和裁の技術を高めるために必死でした。本当に自分には高度な技術があるかわからないので、東京キモノショーの職人大賞に応募したり、40歳を過ぎてから技能検定を受けたりしました。(※筆者追記:宮西さんは東京キモノショー2018で三つ星大賞を受賞、2024開催で一つ星大賞を受賞しています。) でも、結果を出せたとしても、それはただの自己満足で、「技術あるよ、すごいね」と褒められて自信がつくのみ。それが工料に反映されることは少ないのです。 当たり前ですが、呉服屋さんはお客様の方を向いて商売をするので、たやすく工賃をあげてはくれません。お客様は安い方が嬉しいですよね。一方、職人は仕事をもらっている立場から、なかなか交渉できないんです。 工料アップについては、三方(売る人、着る人、仕立てる人)の意識改革が不可欠だと強く思います。これがなかなか難しいのですが、皆さんに、和裁職人の現状を知ってもらうためにXで時々呟いています。 今後、何ができるかわからないけれど、こうして取材してもらえただけでも、Xをやっていた甲斐がありました!母の服のおかげですね!あれ、また母に感謝しないといけない(笑)」 和裁職人の未来のためにと奮起し、東京キモノショー2024(主催:一般社団法人きものの未来協議会)のガイドブックに職人の賛同者を募って広告を出したり、自身のnoteに職人紹介のページを作ったりと、活動の輪を広げている宮西さん。 「これからの和裁職人が食べていけるよう、少し先をいく私はお仕立て代を上げる努力をしていこうと思っています。お客様には着物を気軽に楽しめる価格でなくなってしまうため、大変心苦しい…。それでも、依頼してよかったと思っていただける仕事をするしかないです。和裁の技術を、途絶えさせないように、細々と。これが、和裁の未来のために、私ができること。」と締めくくりました。 (まいどなニュース/ラジオ関西・五ヶ瀬 あお)
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