今年の韓国カルチャーどうだった?2023年のマイベスト・韓国作品。 前田エマ選
ドラマや本、美容からアート、さまざまなカルチャーで心ときめくトピックがあった2023年。2023年のマイベストを各分野に精通するみなさんに聞きました。 今年のアートどうだった?2023年のマイベスト・美術展。 苅田梨都子選 韓国留学中、Hanako Webでの連載『前田エマの秘密の韓国』で現地の気になるスポットを紹介してきた前田エマさん。「韓国と日本の繋がりが昔から様々なかたちで存在してきたことを体験した」と話す前田さんが、その繋がりに着目しながら選んだ「今年のベスト韓国カルチャー」3選とは?
前田エマ 1992年神奈川県生まれ。東京造形大学を卒業。オーストリア ウィーン芸術アカデミーの留学経験を持ち、在学中から、モデル、エッセイ、写真、ペインティング、ラジオパーソナリティなど幅広く活動。アート、映画、本にまつわるエッセイを雑誌やWEBで寄稿している。2022年、初の小説集『動物になる日』(ミシマ社)を上梓。
【1】斎藤真理子『本の栞にぶら下がる』
斎藤真理子さんは現代の日本における韓国文学翻訳の第一人者。この本は、斎藤さんが幼い頃から今まで生きてきたなかで、どういうふうに本と付き合ってきたのかをとても丁寧に綴ったエッセイです。斎藤さんが韓国文学のみならず、様々な国の文学…それこそ日本の作品も含めて、出会い読み解きながら考えてきた歴史の問題や、人間の業について書かれています。 私は韓国のドラマや音楽に触れるまで、本当に朝鮮半島の歴史を知りませんでした。一つひとつ知っていくごとに「こんなことも知らなかったのか…!」と、恥ずかしい気持ち、呆れてしまうような気持ちになることもありました。でも、言葉は良くないかもしれませんが、そのことがとても面白かったんです。この本を読むと、斎藤さんは年齢も経験値も私とは違うけれど、決して上から目線ではなく、恥ずかしさを携えながらも一つひとつ知っていく勇気を肯定してくれる。歴史や社会問題って難しいって思いがちだけど、この本を読むと、まだ知らないことが世界にはこんなにもあるんだということに、恥ずかしさよりも嬉しさを感じられるんです。 特に朝鮮半島の歴史を知ることは、世界各地で過去と現在に起きてきたこと、起きていることと、どこかつながる感覚がありました。その興奮を、もっと聡明に、鮮明に書き残してくれているような、そんな一冊です。