今年の韓国カルチャーどうだった?2023年のマイベスト・韓国作品。 前田エマ選
【2】Netflix『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』
Netflixで配信されている韓国ドラマで、高校時代に壮絶ないじめを経験した主人公が、当時のいじめっ子たちに復讐していく話です。私が韓国で通っていた語学学校には、世界中から生徒が来ているのですが、みんなこのドラマを夜通し観ていました。世界中がこんなに熱狂するんだっていうのを目の当たりにした感動もありましたし、やっぱりどこの国でもいじめの問題ってきっとあるから、みんなが夢中になるんだなということも感じました。 テーマが重いのもあって、私は最初、観るのはちょっと苦しいな…と思っていた部分もあったんですけど、観始めたら次から次にどんどん続きを観たくなってしまう。脚本も演出も美しい、さすがとしか言いようのない作品です。 実際、韓国は日本以上にいじめに対する意識が強く、過去にいじめをしたことがあると大学受験などの時に履歴書に書かれることもあるんです。このドラマの影響もあって、いじめに対する取り組みが変わっている部分もあるので、エンタメの力が社会を動かす様を目撃した、みたいな体験でした。
【3】映画『福田村事件』
関東大震災の5日後、朝鮮人に対するデマを信じた福田村の村人たちによって、香川からやってきた行商団9人が殺害された事件をもとにした映画です。今年が関東大震災から100年なので、日本でも韓国でも朝鮮人大虐殺をテーマにした展示などが多々行なわれました。私は日韓を行き来しながら、この歴史が何を訴えているのかということにすごく興味がありました。 もともと森達也監督の作品もすごく好きで、大学時代に夢中になってみていました。ずっとドキュメンタリーを作ってきた監督ですが、今回は史実に基づいているけれど初めての劇映画ということで、どんな感じになるんだろうとすごくドキドキしながら公開を待っていました。韓国で放送されているドラマや映画の中には、日本と朝鮮半島との歴史について語るものが少なくないなかで、日本ではこういうテーマを取り上げる作品を多くみることはできません。しかし井浦新さんや田中麗奈さんなどメジャーな俳優たちが、この物語を演じるということはすごく意味があると思いました。 朝鮮人大虐殺をテーマにしつつ、朝鮮人に対する差別を描いているというよりも、人間誰しもが誰かを差別してしまう心を潜在的に持っていることが明らかになる。たとえば、まだコロナが何なのかはっきりわからなかった頃も、人に偏見を持ったり、差別的になったりしてしまう部分が私たちにもあったと思うんです。私自身、日本にいる時は、「日本人はこう考えて、韓国人はこう考えるんだろうな」みたいな固定概念が少なからずあったんだなと、韓国に行って気づきました。この作品には、そういう小さな問題から考えるヒントが詰まっていました。国同士の政治、外交、主張などはありつつも、個人単位ではもっと多様な考え方があるということを、どうしても人は忘れてしまう。いかにその感覚を持って生き続けられるのかということ、多様な考え方、多様な受け取り方があるということを考えていきたいなと思いました。
text_Aiko Iijima(sou) design_Ai Nonaka edit_Kei Kawaura