忘れるべきでない「ふたつの戦争以外の戦争」。世界で起きている争いは《ロシア・ウクライナ戦争》《イスラエル・ハマス戦争》だけじゃない――。
そして、今も各地で続く戦争を見ればわかるように、ひとたび戦争が始まれば簡単には終わらない。その結果、多くの人たちの命と生活が失われるだけでなく、ウクライナ戦争によって、世界各地でエネルギーや食料の不足の問題が起きているように、現代の戦争はほかの地域で暮らす人々の生活にも深刻な影響を与えることになる。 こうした食料やエネルギーの不足で最大の被害者となるのは、アフリカやアジアの貧しい国々であり、それがまた、政情不安や内戦を生み出す要因になるのです」 勇ましい"戦う備え"に心を奪われるより、まず戦わないための努力や知恵を尽くさなければ、不幸な戦争の再生産は終わらない。世界で、戦争の現実を目の当たりにしてきた伊勢﨑氏の言葉の重みに、私たちは耳を傾けるべきかもしれない。 ●伊勢﨑賢治(いせざき・けんじ)1957年生まれ。東京外国語大学名誉教授。大学教授の傍ら国連や政府から請われ、シエラレオネやアフガニスタンの武装解除を指揮した紛争解決請負人。著書に『主権なき平和国家 地位協定の国際比較からみる日本の姿』(文庫増補版、集英社文庫)など。ジャズトランペット奏者 取材・文/川喜田 研 写真/時事通信社