忘れるべきでない「ふたつの戦争以外の戦争」。世界で起きている争いは《ロシア・ウクライナ戦争》《イスラエル・ハマス戦争》だけじゃない――。
■内戦や衝突が絶えない貧しいアフリカ地域 では、地域別に今起きている戦争を見ていこう。まずは、"世界最悪の内戦多発地帯"と化しているアフリカから。 まず、1991年に内戦が始まって以降、長年、事実上の無政府状態が続き、今なお南部を実効支配するアルカイダ系のイスラム過激派、アル・シャバーブをはじめ、多くの勢力が国を分断するソマリア。また、2度の内戦の後も政治的な混乱が続き、貧困や飢餓、暴力などの問題が後を絶たないコンゴ民主共和国や、大規模な虐殺を招いたダルフール紛争を抱えるスーダン。 そして、マリを中心にイスラム過激派の動きが活発化し、その政情不安と衝突がチャド、ニジェール、ナイジェリア、ブルキナファソなどの周辺国(サヘル地域)にも広がりつつあるなど、各地で状況が悪化の一途をたどっている。 「アフリカで起きている戦争の要因は、植民地時代の旧宗主国による支配がもたらした国境や、民族間、宗教・宗派による対立、天然資源に関する権益の奪い合いなどさまざまですが、そのすべてに共通するのは、この地域が抱える"貧しさ"です。 厳しい貧困や飢えによって政府への信頼が失われ、政治が不安定化。人々の不満や怒りがもたらす社会の対立と分断の広がりや、貴重な天然資源の権益の奪い合いなどが、やがて内戦へと発展する......。 そして、そうした対立につけ込み、巧みに利用するのが、先ほど指摘した戦争の背後にいる連中の存在です。例えば、中東ではあるものの、ソマリアの対岸に位置し、アフリカと同じような問題を抱えて内戦中のイエメンは事実上の二重政府状態にある。 アブド・ラッボ・マンスール・ハーディー大統領を支援するイスラム教スンニ派のサウジアラビアと、ムハンマド・アリ・アル・フーシ大統領率いるフーシ派を支援するイスラム教シーア派のイランによる事実上の代理戦争という側面があり、これに『アラビア半島のアルカイダ』を名乗る勢力を加えた三つどもえの争いになっています。 また、近年、アフリカ各地の紛争を背景にしながら、急激に影響力を拡大してきたのが、ウクライナ戦争でも話題になったロシアの民間軍事会社・ワグネルです」 えっ? ワグネルって、昨年、ロシア・ウクライナ戦争の最中に起こした反乱に失敗して、代表のプリゴジン氏が失脚~謎の事故死! 会社自体、解体に追い込まれたんじゃなかったっけ? 「プリゴジンの失脚後、ワグネルはロシア国防省や国家親衛隊に吸収され、これまでアフリカ地域でワグネルが担っていた事業も、現在はロシア国防省傘下の『アフリカ部隊』へと引き継がれています。 実は、ワグネルが進出する以前にも、アフリカ各地の内戦や紛争ではアメリカの民間軍事会社が暗躍し、紛争の一方の当事者に対する軍事支援などを請け負っていました。