写真提供／尾崎繁美

　1992年4月25日、26歳の若さで旅立ったシンガーの尾崎豊さん。そんな尾崎さんと18歳で出逢い、20歳で結婚、21歳で息子・裕哉さんを出産し、24歳で最愛の夫と死別するという壮絶な別れを経験した妻・繁美さん。 【画像】尾崎豊さんの妻の繁美さんと息子でシンガーソングライターの尾崎裕哉さん 　「出会いから別れまでの6年間、共に時間を過ごしてきました。この頃、夫には様々な出来事があり、とても濃密で激動な時間だったと思います。今あの頃を振り返っても、よく二人で乗り切ったと思うような……、韓流ドラマにも負けないドラマティクな毎日だったと感じています」と、繁美さん。長い月日を経て、豊さんとの想い出の封印を解き、没後30周年を機に連載『30年後に語ること』として発表。2023年7月からは、豊さんが旅立った後、息子の裕哉さんとともに歩んだボストン母子留学の日々や、今尾崎繁美として考えることを新連載『笑顔を守る力』として寄稿しています。 　今回は、豊さんが旅立ってから共に生きてきた、現在シンガーソングライターとして活躍する息子の尾崎裕哉さんの親子関係について、繁美さんに前後編で綴っていただきます。 　以下より、尾崎繁美さん自身の寄稿です。

噂やイメージとは異なる息子との関係性

　1992年4月25日、愛する夫が旅立ったあの衝撃の日から、突如、毎日が嵐のような激動の日々が訪れ、悲しみの感情に浸る時間も環境も全くといってありませんでした。人間の変容する様はとてつもなく、お金にまつわることのその変わり身の速さは想像を絶するもので、ただただ圧倒されることばかりでした。 　そして何よりも、今まで守ってくれていたはずの夫はもうこの世にはいない。初めて経験すること、考えなくてはならないことが多すぎて現実を受け入れられていない自分がいました。悲しみというよりそれは傷みとなり、絶望している自分の感情にどう向き合ったらよいのかわからないまま、あの頃の私は嵐に揉まれぬように、自分を俯瞰しながら客観的に見ることだけでしか生きていく術を見出せなかったような気がします。 　もちろん、息子は私の命そのものでした。息子がいるからこそ生きてこられたといっても過言ではありません。夫が亡くなり、あれからずっと母子二人で生きてきたので、息子命の母で、息子に依存気味のイメージを持っている人もいるかもしれません。息子のコンサートにはいつもたくさんの友人と参加しているので、ステージママだと思われている節があるかもしれません(笑)。 　ですが、私と息子の間には、息子が10代の頃からしっかりとした距離があります。私たち親子の在り方はちょっと希有な、みなさんが想像するものとは違い、意外なものかもしれません。 　今回は、そんな息子・裕哉との関係性について綴っていきたいと思います。