考え抜いて決めた「胸の切除手術」という選択 20歳の東大生が語る、トランスジェンダー男性として選んだ“生き方” #令和の子
手術の痛みは「叫びたいほど」 でも「後悔はなかった」
手術を終えた3週間後、榎本さんに会いに行くと「ここ1週間はやっと体に触れるようになってきた」と、回復を実感しているようだ。だが、手術を受けたあとの痛みはひどいものだったという。 「体力的にはめちゃめちゃきつかったです。全身麻酔は初めてだったんですけど、その日は本当に痛みがひどかった。人工呼吸器をつけて一晩全く動けず、叫びたいくらい痛かったです」 榎本さんによると、受けた手術は“乳首の周りを切り、そこから胸のふくらみ分をとる”というもの。術後は胸の中がくりぬかれている状態。そこから出てくる血をドレーン(チューブ)で抜く必要があった。 ──痛みが強かったと思います。胸がなくなったという実感や喜びは、いつから感じるように? 「最初からでした。終わった瞬間からほっとしたんです。めっちゃ緊張していたので、男友達から『終わったんや、おつかれ』って連絡がきて、『ほっとした。めっちゃ泣きたくなった』みたいに送ったら『泣いていいんだよ』みたいなのが返ってきて、本当に泣きたくなっちゃって。 友達とか親とかに連絡したことで、これまで『いつまで耐えなくちゃいけないんだろう』って思っていた部分が、この先はもう耐えなくていいんだって込み上げてきました」 考え抜いて決めた、手術という選択。胸がなくなった以上に、得た感情が大きかったという。 「すごく個人的なことを言えば、周りからの愛を確認する機会になりました。手術の前には『頑張れ』『応援している』『やっとだね』とか『これまで頑張ったね』とかメッセージがたくさん来て、手術が終わった後も『終わったんだね』ってメッセージがワーッてくるんです。それが本当に嬉しくて、自分は周りに支えられてるんだなってすごく思いましたね。 周りに言わずに一人で来ていたら、多分耐えられなかったんじゃないか。そこを支えてくれたのは本当に周りの人たちだなと思いましたし、その人たちは手術をしてもしなくても実はずっと自分の周りにいてくれた人たちだったけど、手術っていう機会でそれを感じさせてもらいました」