能見篤史氏 球児監督のゴルフに見た勝負師の片りん プラン立てしっかりマネジメントしてラウンド
(上)からの続き 【球児にYELL 能見篤史氏(下)】投手出身の監督は成功しない。そんな主張をする人がいる。内野手や捕手が向いていると一般的にはいわれている。根拠はどこにあるのだろうか。 思うのは絶対数の差だ。プロ野球では野手出身の監督が圧倒的に多い。絶対数で多いから、当然優勝した回数も増える。それに比べて投手出身監督は少ないから、優勝回数には差がある。私は数の違いだけだと思う。 最近でもソフトバンク工藤監督は在任中、5度の日本一に輝いたし、ヤクルト高津監督もリーグ連覇を果たした。阪神でも星野監督が優勝した。投手だから、というのは早計だ。藤川監督は頭の回転が速いし、野球の奥深さを知っている。監督としての十分な資質を備えていると見ている。 学年が一つ上の私もいろいろ勉強させられた。入団した05年はJFKとして活躍していた時期で「こんなボールを投げる人間っているんだ」と第一印象が強烈だったのを覚えている。加えて伝えることは巧みだ。「こういうことになったら、こうなる」という明確なものを持っていて、言葉を選んで伝えるタイプ。私が打ち込まれ、大量失点した後も声をかけ、的確な指摘をしてくれた。気配りもできる守護神だった。 オフや引退後は何度かゴルフを楽しんだことがある。「楽しむときには楽しまなきゃ」がモットーだが、それでも勝負師の片りんを見せる。18ホールの中でスコアをどうまとめるか、勝負どころはどこなのか、プランを立て、しっかりマネジメントしてラウンドしていた。物事に対するアプローチが的確なタイプだと思う。 藤川監督がどんな野球を目指すのか。これは楽しみで仕方ない。監督というのは、外には分からない仕事がいっぱいある。先を見据えて、一つずつ懸案を処理していると思っている。就任会見で選手の個人名をあえて出さなかったのも、藤川監督なりの思惑があるはず。ビジョンはしっかり描いているに違いない。勝ちに行きながら、しっかりチームの基盤をつくる。藤川流に期待したい。(スポニチ本紙評論家)