溢れる思い出…ZOZOチャンピオンシップの6年間 大会事務局長・畠山恩さんが必ず行った「お出迎え」の儀式【2024年 米ツアー振り返り】
日本で唯一開催されてきた米国男子ツアー の「ZOZOチャンピオンシップ」は、2019年から千葉県のアコーディア・ゴルフ 習志野CC(コロナ渦の20年を除く)で行われ、24年で契約満了を迎えた。来年からは、株式会社ベイカレントがタイトルスポンサーの「ベイカレントクラシック」が神奈川県の横浜カントリークラブで開催されることが決定している。 【写真】タイガーが日本で歴史的快挙を達成!43歳で82勝に到達 ZOZOチャンピオンシップの大会事務局長を務めた株式会社ZOZOの 畠山恩(はたけやま・めぐみ)さんに、これまでの6年間を振り返ってもらった。 ■タイガー・ウッズのツアー通算82勝目から始まった“ゾゾチャン ”の歴史 「いろいろな思い出がありますね…」。そう語り始めた畠山さん。初年度は大会開催前に台風21号が直撃し、コースへのダメージは大きく、大会は翌週の月曜日に延長される異例の事態に。その中で、タイガー・ウッズ(米国)がツアー通算82勝目を飾った。 「大雨で中止になった日もあり、急きょ無観客試合になって、最終的に月曜日決着。いろんなことが起きて、タイガー・ウッズが優勝する瞬間は、もちろん、私も号泣したんですけど。なんだろうな…そこまでがあまりにも劇的すぎて。本当に、伝説の大会だったと思います」と感極まった。 第2回の20年は新型コロナウイルスの影響で、米国開催に変更。ディフェンディングチャンピオンのウッズ、ゴルフ界のレジェンドであるフィル・ミケルソン(ともに米国)など世界トップクラスの選手が熱戦を繰り広げた。初日から首位を守っていたジャスティン・トーマスを、パトリック・キャントレー(ともに米国)が逆転して優勝するスリリングな展開となった。 21年はコロナ禍の影響で観客数が1日5000人に制限され、感染対策を徹底した。「コロナとどう向き合うかが重要視され、すごく細かいルールがありました。お客様、選手、スタッフの安全に過ごせる環境。それを作る責任とプレッシャーは大きかったです」。当時はコロナ禍により渡航も難しかったが、「その中で来てくれた選手たちには本当に、本当に感謝しかありません」と話した。 この年、「マスターズ」を制覇した松山英樹が凱旋勝利を挙げた。「日本中に勇気を与えるような、強い松山選手の姿を見せてくれた。鳥肌が立ちました」。感動を呼び起こす大会となった。 ■ゴルフだけではない 観戦体験の魅力を再発見 22年は感染症対策が緩和され、観客数の制限も撤廃。19年以来の通常開催となった。だが、観客への事前アンケートでは、まだ人混みに対して警戒をする声もあったという。 その中で少しでも楽しんで帰ってもえらえるように、「日本の浮世絵とかをテーマにして」日本ならではの“お祭り”をイメージしたイベントコーナーを企画。「皆さんの期待を裏切りたくなかったですし、2019年大会のハードルを超えなければいけなかった。それらが大きいプレッシャーになっていたかもしれません」と、当時の心境を明かした。 22年大会で改めて感じたのは、“ツアー観戦の楽しさはゴルフだけではない”ということだった。「仲がいいお友達や家族と一緒に楽しんでもらえるような、秋の行事の一つとして定着させたいと思いました」。これまではコロナの影響もあり、開催することだけに注力していたが、それに加えて“ゴルフファンが満足できる会場作り”にも取り組むことができるようになった。 多くのゴルフアパレルショップ、子どもから大人まで楽しめる参加型コンテンツや数十店舗のフードエリアなど、多彩なコンテンツがそろった。会場は“秋のゴルフ祭り”さながらの賑わい。23、24年大会も多くのギャラリーを迎えて歴史に一区切りをつけた。 ■6年間の大会を支えた“朝の儀式” 畠山さんには、大会開催期間中に欠かさず続けていた“儀式”があった。「毎朝、運営メンバーにごあいさつするだけでなく、1番目に並ぶお客様から、時間の許す限りごあいさつをさせていただいていました。あいさつをすると自分の気も引き締まりますし、皆さんをしっかりと“お出迎えしたい”という気持ちからです。それが儀式のようになっていました」。大会運営スタッフだけではなく、ギャラリーへの感謝を大切にしてきた。 こうした“おもてなし”は、畠山さんにとって大会事務局長としての使命そのものだった。世界ランキング2位のザンダー・シェウフェレ(米国)ら米ツアーメンバーたちからハグをされたり、囲まれて談笑する姿が見られる一方、コース内ではギャラリーからも声をかけられていた畠山さん。一人ひとりに笑顔で応えるその姿は、まさにZOZOチャンピオンシップの“顔”そのものだった。(文・高木彩音)