「実は国民の3人に1人が患者」 頭痛専門医が教えるマッサージ法と食事 「チョコはダメ、コーヒーが有効」
薬の飲み過ぎに注意
薬についても触れておきたいと思います。ちまたには、何種類もの市販の鎮痛薬が流通していますが、専門医の立場から誤解を恐れずに言うと、どの銘柄も効き目に大した違いはありません。 むしろ気を付けたいのは、薬の飲み過ぎです。実際、薬物乱用頭痛(MOH)という種類の頭痛が存在します。これは鎮痛薬の使い過ぎによる頭痛で、痛みを和らげるために飲んだ薬のせいで頭痛になるという本末転倒な現象が起きてしまうのです。 MOHを考える上で大事なのは、鎮痛薬を「何錠飲んだか」よりも「何日飲んだか」です。脳の中には痛みの“番人”のような存在がいて、薬を飲んでいる状態が長くなると、その番人に変化が起こり、比較的軽度の痛みでも強い痛みと誤認させるように働いてしまうのです。 例えば鎮痛薬の量を1日1錠に抑える代わりに5日連続で飲んだ場合(合計5錠)と、1日に3錠飲む代わりに3日間で服用をやめたケース(合計9錠)とでは、一見、後者のほうが体に悪そうですが、実は前者のほうがMOHのリスクは高くなります。もちろん、1日の服用錠数は定められた限度内であることが大前提です。 最後に、改めてQOLの問題について考えてみたいと思います。重症片頭痛発作が日常生活に対して与える支障度は、認知症や四肢まひと同等に分類されています。やはり「たかが頭痛」の思考から脱し、「頭痛は病気である」としっかり認識して食事や薬などに気を付ける。このことが、日本人のQOL改善に大きく貢献すると私は考えています。
丹羽 潔(にわきよし) 頭痛専門医。1963年生まれ。日本頭痛学会専門医・指導医・代議員。東海大学医学部卒業後、ドイツとアメリカの大学で脳神経内科を学ぶ。院長を務める「にわファミリークリニック」で2008年に頭痛外来を開設。15年には、専門医のみによる日本初の頭痛専門クリニック「医療法人社団英麗会東京頭痛クリニック」を開く。『日本初の頭痛専門クリニックが教える 最新「頭痛の治し方」大全』などの著書がある。 「週刊新潮」2024年9月19日号 掲載
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