ダニ・オルモの登録問題で窮地のバルセロナ会長、現地識者は「辞任はないだろう。“抵抗”が唯一の方法であることを彼は第一次政権時に学んでいる」
『ラジオ・マルカ』の人気番組『ラ・ピサーラ・デ・キンターナ』で、バルセロナのMFダニ・オルモの登録問題を巡って、ディベートが繰り広げられている最中だった。識者の1人のアルベルト・エジョゴ=ウォノが呟いた。「ソシオ(クラブ会員)がジョアン・ラポルタを会長に選んだのは、彼のロックンロールを期待したからだ」 【画像】ファン必見!世界で躍動する“イケメン&マッチョ”アスリートたちを完全網羅! 2021年3月、ラポルタはバルセロナの会長選に勝利し、再任を果たした。経営の立て直しが最優先のクラブの舵取りを託すにはリスクをはらんだ結果だったが、ウォノ氏はそれを承知の上でソシオはラポルタのロックンロール、つまりイケイケに賭けたと指摘しているわけだ。 その持ち前のロックンロールは健在だった。資金が枯渇していれば、“経済的レバー”という婉曲表現を使って未来を切り売りすることで、大型補強を敢行。その綱渡りの経営は、毎夏の選手登録に悪戦苦闘する姿に垣間見られたが、むしろ時の経過とともにロックンロール度は強まっていった。そしてその時限爆弾がついに爆発したのが、今回のダニ・オルモの登録問題だった。 昨年8月、負傷離脱したアンドレス・クリステンセンのサラリーキャップの枠を使って、登録を完了させたが、あくまで一時的な措置で、1月に再び登録外になるリスクは早くから指摘されていた。現地では、「まともな企業の経営者ならありえないことだ」と批判の声は絶えない。 しかし、危険な兆候を見せるラポルタ会長の動きを遠巻きにして眺めながら、今シーズン序盤のチームの快進撃に歓喜していたのも、ソシオでありファンだ。このサッカーファン特有の心理を、ジャーナリスト兼作家のエンリケ・バジェステル氏が次のように解説する。 「ファンの人生は短い。会計や財務規則、監査の細々とした基準に注意を払う余裕などないし、サッカーに興味を持ったきっかけがクラブ経営だったなんて答える者がいるとは思えない。サッカーがここまで我々の心を掴んで離さないのは、現実を否定し、新たな希望を抱かせてくれるからだ。サッカーにおいて、ファンは無邪気で甘やかされた子供だ。だから経営者は、短期目線の経営で成功を収めることだってできる。騙し騙しその場凌ぎのやり繰りでも、結局は何も起こらないという確信の中で我々ファンが育てられてきたことで成り立つ古典的なやり方だ。ただずっとその調子で突き進んでいると、事の重大さに直面することもある。バルサにその日が来たのかもしれないし、あるいは数時間後に今の混乱から抜け出す方法を見つけることができるかもしれない。なぜならそれがサッカーであり、バルサの場合も、でたらめな行動を続けていても、再び望む結果を手にする可能性だって残されている」 ラポルタ自身は、自分のやり方について「過剰な楽観主義を醸成しているという認識はない。夢を与え、情熱を喚起することが好きなんだ」と語っている。 かくして説明責任を求める声を無視して、暫定的でもなんでも登録が認められることを信じて、ダニ・オルモは同じ境遇に立たされているパウ・ビクトルとともに、サウジアラビアで行なわれるスーペルコパ・デ・エスパーニャ(1月8~12日)の招集メンバーに名を連ねた。 会長に辞任を要求する声も当然高まっているが、「ラポルタは辞任することはないだろう。このような状況では、抵抗することが唯一の方法であることを、第一次政権時の経験から学んでいるからだ」とバルサ寄りのスポーツ紙『ムンド・デポルティボ』の編集長のサンティ・ノジャ氏が予想するように、最大の窮地に立たされても、音を上げる姿を想像することは難しい。サッカーが味方することを信じてこれからもロックンロールで突き進んでいくはずだ。 文●下村正幸
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