じつは「汗の量」は民族によって変わる…「日本人」と「暑い地域の民族」の汗のかき方の違い
怖いものを見ると汗をかくのはなぜか ─精神性発汗とは
ヘビなど恐れをなすものを想像したり、怖い思いなどすると、冷や汗をかくことがありますね。このように暑さ以外に、緊張したときやストレスを受けたときなどに人間が汗をかくことを久野は示し、これを精神性発汗とよんでいます。この場合、視床下部のほかに大脳辺縁系や大脳新皮質といった高次の脳機能が関わっています。 精神性発汗は、手のひらや足裏に多くみられます。「手に汗握る」ともいいますね。先にお話ししたようにイヌやネコは足の裏に汗をかきますから、そういった意味では人間の精神性発汗に近いのかもしれません。手のひらの汗は物を確実に掴むため、足の裏の汗は体を確実に支えるため、そういわれています。 本来、自律神経は意思による制御を受けない神経のことでしたね。それゆえ不随意神経ともよばれました。しかし自律神経の支配下にあるはずの汗腺の活動が、心によって左右されうることを、久野は精神性発汗を通して実証したわけです。そうした功績は大変大きく、「発汗」は日本医学の王道となりました。彼が勤務していた名古屋大学では、現在も汗の研究が進められています。 さらに連載記事<意外と多い…1日に分泌される「唾液の量」と「その種類」>では、人間の唾液の仕組みについて詳しく解説しています。
鈴木 郁子(歯学博士・医学博士・日本保健医療大学保健医療学部教授)