予選ヒートからペナルティ続発の波乱。勝者失格により南米王者モンテネグロが金メダル獲得/FIA MSG
今季で第3回を迎えた“モータースポーツのオリンピック”こと、FIAモータースポーツ・ゲームスのTCR規定ツーリングカー部門が、10月26~27日の週末にスペインのバレンシアで開催され、予選レースから決勝メインのヒートまで、優勝争いの当事者に相次ぐペナルティが課される展開に。 【写真】シビックRを駆るブティがトップチェッカーを受けたが…… 最終的には予選レースでもタイム加算の懲罰を跳ね返して勝利した、南米大陸王者のイグナシオ・モンテネグロ(RC2モータースポーツ/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が、小雨混じりのファイナルでも勝者となり金メダルを獲得。このヒートでトップチェッカーを受けていたマルコ・ブティ(GOATレーシング/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)は、技術規約違反のため最終結果から除外の憂き目に遭っている。 オランダ出身トム・コロネルがゴールドメダリストに輝いた前回大会から約2年、南仏のポール・リカールからスペインはリカルド・トルモ・サーキットに開催地を移した今回は、欧州勢を軸に南米、東欧などから全15カ国のエントリーが集った。 その走り出しとなるフリープラクティス1(FP1)ではアルゼンチン代表のモンテネグロが、続くFP2ではイタリア代表ブティが最速タイムを刻み、このFL5シビックRのふたりが真剣に金メダルを狙う候補であることを満天下に示すと、夜間に雨が降ったにも関わらず、明けた土曜予選ではモンテネグロが濡れた縁石をものともせず、気合のポールポジションをさらった。 「今シーズンはヨーロッパとスペインの両方でレースをする機会があったから、本当に気分がいい」と、専門サイトの『TouringCarTimes.com』に語った19歳のモンテネグロ。 「それでも自信過剰になりたくない。ここでは他のTCRシリーズのようにクムホ(タイヤ)は使用せず、より柔らかいタイヤであるピレリを使用している。それがFL5シビックRにとってどう機能するかを理解するには、FP1とFP2しかなかったからね。週末全体でタイヤは12本しかないが、今週末の目標は優勝だ。そのために来たし、勝てなかったら学ぶものあるだろう」 そのまま午後に開催された25分+1周の予選レースは、ライトが消えた直後にモンテネグロがジャンプスタートで5秒のタイムペナルティを受ける。背後ではラファエル・レイス(モンラウ・モータースポーツ/クプラ・レオンVZ TCR)が追突されて車体右後方を損傷し、メーガン・トムリソン(GOATレーシング/アウディRS3 LMS2)がコースアウトしてグラベルトラップに捕まったことで、早くもセーフティカー(SC)が出動する。 ■使用が禁止されているシステムが作動 終盤にはオーレリアン・コンテ(SPコンペティション/クプラ・レオンVZ TCR)やブティがトラックリミット違反のためドライブスルーを受け後退。地元スペイン出身のエリック・ジェネ(モンラウ・モータースポーツ/クプラ・レオンVZ TCR)に対して5.558秒差までギャップを築いたモンテネグロが、まずは予選レースを獲った。 「今週末は、いつも乗っている車両ではないクルマでレースをしている。スタートが来たとき、クラッチがとても軽いと感じてエンストさせないようにジャンプスタートを切った」と明かしたモンテネグロ。 「ペナルティを受けることはわかっていたが、ペナルティの通知が少し遅すぎたと思う。SCが出たときは2回目の可能性を危惧していた。もしそうなっていたら、アドバンテージを築けなかっただろうからね」 明けた日曜はスタート10分前に小雨が落ち始め、30分+1周の勝負を前にグリッド全車がスリックタイヤを装着したままグリーンを迎えることに。ポールシッターのモンテネグロが順当にリードを維持したものの、背後ではジェネ、レイスらに加え、アダム・コウト(ヤニック・モータースポーツ/ヒョンデ・エラントラN TCR)らのポジション争いが激化し、接触やスピンなど濡れた路面に脚元をすくわれるドライバーが続出する。 さらに降雨量が増えると首位モンテネグロに対しブティが差を詰め始め、12周目には両者接触バトルへと発展。13周目のターン1で並走した2台はボディをぶつけ合いながらブティがトップに立ち、ここでモンテネグロには警告が出されることに。 チェッカー時点では、そのままブティがモンテネグロに6秒差をつけてフィニッシュし、最終ラップでレイスにぶつかったコンテは20秒のタイム加算ペナルティを受け、ジェネが最後の表彰台を獲得した。 しかし、レース暫定結果からリザルトは大きく覆ることになり、まずは3位のジェネにはコウトとの接触でペナルティが課され、これでレイスの表彰台とメダル獲得が確定。続いて勝者ブティには『技術規則の第6条4項の違反』、つまりメインレース中にエンジンが作動しているときにアンチラグシステムを手動でオンにした……との判断が下され、最終的にモンテネグロがレイスとコウトを従えての金メダル獲得、となった。 「このALSシステムのオンオフは完全に意図的ではなく、濡れた路面のスリックでのドライブという厳しい状況によるカウンターステアが原因だ。残念ながらステアリングホイールのこのボタンを気付かずにオンにしてしまったとしても、この決定を受け入れるよ」と失意のブティ。 「この件についてはチームにも非常に申し訳なく思っている。つねにスピードを発揮してきたにも関わらず、僕にとっては悲惨な週末になってしまったね……」 [オートスポーツweb 2024年11月01日]