ハミルトンのメルセデスF1最終年度での苦戦、その原因は? エンジニアリング統括が明かす
ルイス・ハミルトンのメルセデスF1でのラストシーズンは厳しい1年間となったが、チーム側が改めて、ハミルトンが力を発揮できなかった理由を説明した。 メルセデスからハミルトンへ。別れのスペシャルムービー ハミルトンの2024年シーズンの成績は223ポイント獲得のドライバーズランキング7位。6位となったチームメイトのジョージ・ラッセルとは特に予選で差がつき、6対24(スプリント含む)で負け越した。 ラッセルとハミルトンの差が非常に大きいわけではなかったものの、各マシンが僅差で争う状況では、後方グリッドからの挽回は厳しく、決勝レースでリカバリーすることも難しくなってしまった。 メルセデスF1のトラックサイドエンジニアリング責任者であるアンドリュー・ショブリンは、ハミルトンの苦戦について、結局のところマシンに十分な速さがなく、セットアップのスイートスポットが狭いマシンとの戦いを強いられてしまったことが原因だと語った。 「我々のマシンは十分な速さがなかった。それは我々としても、解決しようとしてきたことだ」 ハミルトンが抱えた問題が何だったのかを振り返ったショブリンは、そう語った。 「マシンを良いバランスのウインドウに入れることも簡単ではなかった。特にそこにたどり着いても、それを維持するのもまた問題だった」 「それらに加え、ルイスが1周(の予選アタック)において苦戦していたことは周知の事実だと思う。彼のレースペースは週末を通じていいものがあったが、予選の競争は僅差で、チームメイトよりも後ろからのスタートが多くなってしまい、そのせいで詰まって真の力を示せなかったということだ」 「もちろんルイスのレースペースはかなり良かった。彼は機能してくれるクルマがあれば、先頭争いにすぐに復帰できることをラスベガスで示していた。以前のルイスの姿がよく見えたよ」 さらにショブリンは、ハミルトンが予選で苦しんだ要因について詳しく語った。 「彼にとって真に問題だったのは、最後の0.1~0.2秒を絞り出すときだった」 「ブレーキのロックやコーナー出口でのスナップ(オーバーステア)を避けるのが難しかった。それがまさに問題だったんだ」 「しかしチームの見解としては、ラスベガスのように、我々がルイスのスタイルに合っていてベストな力を発揮できるマシンをもっと提供する必要があったんだ」 ハミルトンやダニエル・リカルド、ケビン・マグヌッセンなど、ブレーキングが強みとされるドライバーらが、グラウンド・エフェクトを大きく活用した現行マシンでは苦戦している傾向があった。ただ、ショブリンは現行マシンが主な原因だとは考えていない。 より重要なのは、リヤタイヤをオーバーヒートさせずにアクセルでマシンの向きを変えていくことだとショブリンは考えている。 「最近はリヤタイヤを過熱させないことが大事になっていると思う」 「コーナーへのアプローチでタイヤが熱くなるか、もしくはアクセルでマシンを曲げていかなくてはならない場合、苦労してしまうだろう」 「(ブレーキングスタイルは)その要因のひとつかもしれない。ただマグヌッセンとリカルドについては十分に知っているわけではないから、彼らの問題だったかどうかは分からない」 「だが1周のアタックにおいてリヤタイヤをオーバーヒートさせないことは、サーキットの半分以上において間違いなく最重要なことだ」 メルセデスの2024年マシンW15からラッセルがより一貫してパフォーマンスを引き出していたことは、ふたりのスタイルの違いが要因となった可能性を示している。ただショブリンとしてもラッセルが予選で上手く問題を乗り越えられた理由については、明確な説明が難しいようだ。 「スタイルやアプローチではないと思っている。なぜならジョージにとって上手くいっているモノがあれば、賢いルイスはその方向にドライビングを合わせることができるからだ」 「最終的に、彼らが本当にプッシュし始めると、コーナー出口でスナップオーバーステアが出始めることがある」 「そしてそれに対しては、ジョージよりもルイスのほうがより苦戦していたかもしれない。だが先程も話したように、我々が今年集中していたのは、ルイスが限界で走ってもそういった問題に悩まされないようなクルマにするには、どうすればいいかということだったんだ」
Jonathan Noble