世界のリーダーが安倍晋三から学ぶべき「トランプの扱い方」を米紙が指南─「安倍ほどうまくトランプ付き合った指導者はいない」
ドナルド・トランプによる第一次政権時代、彼のことを最も心得ている世界のリーダーがいたとすれば、それは当時の日本の首相、安倍晋三だろう。安倍はトランプの「ゴルフ好き」、「ハンバーガー好き」、そして「お世辞好き」を利用して、トランプの懲罰本能から日本を守るのに役立てた。 【画像】ゴルフ、鯉の餌やり、夫婦で会食 2016年、トランプが当選すると、安倍は他国の首脳に先駆けてニューヨークのトランプタワーを訪ね、ゴルフクラブを贈った。就任式が終わると彼はすぐに、世界の舞台で新人を導く長老の役割を引き受け、度重なる電話にも親身になって耳を傾けた。就任から数週間後、フロリダ州マー・ア・ラゴにあるトランプの別荘を訪れ、二人は一緒にゴルフを楽しみ、お互いの夫人も交えて食事を共にした。 それだけではない。トランプが国賓として来日した際には、大相撲で「米大統領杯」を用意し、即位したばかりの天皇に会う「初めての国際的指導者」という名誉も与えるなど、もてなしにもてなしを重ねた。 安倍は「素早く行動し、トランプとの話し方、口調を心得ていた」と、米リスクコンサルティング会社ジャパン・フォーサイトの創業者で代表のトバイアス・ハリスは指摘する。「彼ほどうまくトランプと付き合った指導者は思い当たりません」
安倍がトランプの脅しを撃退できたわけ
いま、日本だけでなく世界中が二度目のトランプ政権に備え、第一次政権の4年間を必死に振り返り、この気まぐれな大統領とどう付き合うかを模索している。日本の現首相石破茂も11月7日朝、次期大統領に電話をかけ、祝意を伝えた。また、可能な限り早くトランプと会談するつもりだと報道陣に語った。 安倍の戦略は、トランプが掲げる「米国第一」主義の衝撃を和らげるための手引になりうるだろう。トランプは大統領に初出馬した際、日本の自動車メーカーに国境税を課すと警告し、日本は自国の防衛費を充分に支払っていないと非難した。 だが、ともに保守的なタカ派で、ナショナリストだったトランプと安倍は政治的価値観を共有していたこと、また、安倍がトランプに媚びる術を知っていたことから、安倍はほとんどのトランプの当初の脅しを撃退できた。法政大学の政治学者山口二郎は、安倍について「日本政府とトランプ政権の不必要な衝突を避けた」と話す。 また、トランプが大統領に就任したとき、安倍には首相としてすでに5年近く務めていたというアドバンテージもあった。 2017年2月、マー・ア・ラゴでの会食中に北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際には共同で記者会見を開き、トランプから「米国は同盟国の日本と100%ともにある」という言葉も引き出した。
日本は「ずっと取り組んできた」と言える
一方で、時間が経つにつれ、周囲は安倍の努力に対する見返りは充分得られているのかと疑問視しはじめた。ゴルフ中にバンカーに落ちるという不名誉にさえ耐えていた安倍だったが、トランプは、鉄鋼・アルミニウムの関税の一時的な免除措置国のリストから日本を外し、北朝鮮の金正恩との核交渉でも安倍を蚊帳の外に置いた。「見返りは少なくなっていました」と前出のトバイアス・ハリスも認める。
Motoko Rich