大統領選の賭けに勝ったマスク、トランプに「使い捨て」される可能性
イーロン・マスクの富と名声は、ここ数十年で彼が行ったスペースXやテスラなどに対するリスクの高い賭けからもたらされた。今年の大統領選でドナルド・トランプの選挙運動に巨額の資金を投じた彼の賭けは、これまでで最もハイリスクな賭けだったかもしれないが、この賭けも実を結び、マスクを新政権において最も影響力のある経営者に押し上げて、さらに裕福にするはずだ。 世界一の富豪であるマスクの資産は、テスラ株がトランプ勝利のニュースで15%急騰したことを受けて、11月6日に210億ドル増加し、2856億ドル(約43兆6000億円)に達した。彼の宇宙企業のスペースXも、トランプ政権の下での政府との契約で収益を伸ばし、マスクの富をさらに増大させると予測できる。 彼が政府から得られる恩恵は、テスラ株からの短期的な利益を上回る。トランプは、マスクを新政権の政府の効率化のアドバイザーに起用したいと述べており、そのことは、マスクが関わる業界や企業への規制緩和につながることが示唆されている。 「彼は特別な人だ。超天才だ」と、トランプは6日未明の勝利演説でマスクについて語った。「我々は天才を守らなければならない。彼のような人は、そんなに多くはいない。我々は超天才を守らねばならない」とトランプは繰り返した。 マスクとバイデン大統領の関係は、政権の初期から冷え込んでおり、大統領は2021年8月にホワイトハウスで開催した電気自動車(EV)関連のイベントに、GMやフォードの幹部らを招いた一方で、マスクを招かなかった。マスクは当時、「テスラが招待されなかったのはおかしい」と投稿していた。 しかし、次期政権では状況が大きく変わりそうだ。マスクは、自身の「アメリカPAC」を通じて約1億2000万ドルを、トランプと共和党候補者に提供したことに加え、激戦州の有権者向けに物議を醸す現金給付を行い、トランプの集会に何度も顔を出した。これらの行動は、テスラの中心的な顧客層である「環境意識が高い消費者」に好まれないとの調査結果が複数報じられる中で行われた。