メキシコの世界最古団体で単身20年にわたり活躍する日本人プロレスラー「OKUMURA」インタビュー
その際に奥村が裏で尽力し、両団体の合同興行として11年に始まったのが「ファンタスティカマニア」だ。日本でルチャを観戦できるこのシリーズは、新型コロナウイルス禍の中断を挟み、今年12回目を迎えた。昨年にはメキシコとイギリスでも行なわれ、今年7月には初めてアメリカでも開催された。 「新日本プロレスとCMLLが提携して15年目。カップルなら別れてもおかしくない年数です(笑)。これだけの年数を費やしてコツコツと信頼関係を築いてきました。日本のファンから『今年のファンマニ、終わっちゃった。すでにファンマニロスです』と聞くたび、CMLLの選手として本当にうれしく感じます」 なぜ、日本で「ひと山いくら」の選手だった奥村は本場メキシコのルチャリブレで地位を確立し、20年も活躍できているのだろうか。 「平凡な選手だったからですよ。タイガーマスクみたいなことができるわけではないから『ウサギとカメ』のカメのようにコツコツやっていこうと。最初は自分のことだけに必死でした。 意地を張っていた部分もあります。でも、新日本プロレスの菅林会長が来られた頃から『日本とメキシコの架け橋になろう』と思えた。僕はオンリーワンにはなれないからこそ、一日一歩、コツコツやるしかなかった」 今年の大晦日、奥村はレスラー人生30周年を迎える。年齢も50代に突入し、気づけば周囲には自分より若い選手のほうが多くなった。 「好きなプロレスをやっているけど、会社に『もういらない』と言われたらレスラー人生は終わり。後悔したくない気持ちが強いですね」 満身創痍だが、日々の稽古は欠かさない。今も一日一歩ずつ、奥村はキャリアをコツコツ重ねている。 ●奥村茂雄(おくむら・しげお)1972年5月25日生まれ、大阪府出身。94年12月31日にデビューし、全日本プロレスなど日本の各団体に参戦したのち、2004年5月単身メキシコへ。以来、20年にわたり、メキシコのCMLLに所属し活躍を続けている。ニックネームは「戦慄の逆輸入ルード」 取材・文/中島大輔 撮影/Ryu Voelkel ©️CMLL/Alexis Salazar(試合) Special thanks to CMLL