メキシコの世界最古団体で単身20年にわたり活躍する日本人プロレスラー「OKUMURA」インタビュー
メキシコに渡って2週間後、CMLLでのデビュー戦が組まれた。セミファイナルでスーパースターのエル・サタニコと対戦したが、決して技量が評価されたわけではない。新外国人選手だから抜擢されたのは明らかだった。 だからこそ毎週火・水・木の、午前11時から2時間の練習に欠かさず出続けた。毎週水曜は地方遠征にも行き、試合後に夜行バスで帰ってくるのは翌朝7時。ほぼ寝ないで4時間後には、道場で汗を流した。 「スペイン語はまったく話せず、メキシコで右も左もわからない。だから言われたとおりにやろう。本気で飛び込んで、この世界で食べていきたいと思っているか。言葉が通じなくても伝わるはずだ」 自費でメキシコ人の語学教師を雇ってスペイン語を学び、空いた時間は「早くスタイルになじもう」とほかのレスラーの試合を見に行った。 ■1万人を超える観客からブーイング ルチャリブレでCMLLは最高峰の舞台として名高い。首都メキシコシティには150人近く所属選手がいて、地方の支部を主戦場にするレスラーもいる。その下では何千人の練習生たちが明日のスターを目指して励んでいる。日本に空手や柔道の道場が多くあるように、メキシコには街じゅうにルチャ教室があるのだ。 「親がレスラーで3歳頃からリングで練習している2世、3世がいっぱいいます。その中から13歳でデビューする選手がいれば、16歳で完成された選手も山ほどいる。彼らに運動能力ではとてもかなわない。凡人の自分はどうやって生きる場を見つけられるか。ずっと考えていました」 聖地アレナ・メヒコに試合を見に行くと、1万人を超える観客から外国人選手が強烈なブーイングを浴びせられていた。奥村はルード(悪役)だ。観客をヒートアップさせてこそ、存在価値が高まる。 同時に世界最古の団体であるCMLLは伝統を重んじ、高いレスリング技術が求められる。凶器攻撃など厳禁だ。 そこで奥村が活路を見いだしたのが、日本で培ってきたスタイルだった。 「ぶっ潰すぞ!」