臼井麗香がツアー初V、河本結が完全復活、渋野日向子も...『黄金世代』再躍進のわけ
その言葉を聞いて、なるほど、と思いました。 先にも触れたとおり、1998年度生まれの優勝者は15人。他の世代では多くても6人くらいらしいので、やはり『黄金世代』というのは"特別"な感じがあります。 そんななか、誰かが勝つということは、自分が負けていることになるんだけど、それでも「おめでとう!」と祝福できるのは、自分たちの世代への誇りがあるからで、自分もその仲間である、という高揚感みたいなものがあるのだろうなと思います。 もちろん彼女たちは、内に秘めた競争心というか、「負けたくない」という気持ちを強く持っていて、常にお互いに刺激をもらって、自分の力に変えられているような気がします。そういう相乗効果みたいなものが『黄金世代』には働いているのだと思います。 ◆ ◆ ◆ 森口プロが言う、『黄金世代』の間に生まれている相乗効果をひとつ挙げるなら、それはある種の"同期現象"の類いだろう。同期現象とは、まったく違う振動をしていた複数のメトロノームが、お互いの振動が影響し合って、数分後には振動がそろってしまうという、あの現象だ。 人間の脳や行動でもこの同期現象が起こっていて、スキップがまったくできなかった子どもが、スキップが得意な子たちの間でやっていると、自然にできるようになったりするという。また、サッカーのようなチームプレーにおいては、数人がいわゆる"ゾーン"に入ると、それがチーム全体に波及して"チームフロー"という同期現象が起こることも報告されている。 人間のなかで同期現象が起こるには、空間、時間、目的の共有が必要とされている。1998年度生まれの子たちが小学校入学を目前に控えた2004年は、宮里藍がプロに転向。本格的にツアーに参戦し、"藍ちゃんフィーバー"が巻き起こった。 その後、宮里は世界の舞台でも躍動。学校の休み時間や放課後にゴルフの話で盛り上がり、『将来は藍ちゃんのようなプロゴルファーになる』と、2005年に小学校に入学した子どもたちは、そんな人生の目的を共有してきたのかもしれない。以降、互いに努力を重ね、才能を競い合って、その強さを波及させてきた。そうして、『黄金世代』と呼ばれるようになる。 NEC軽井沢72で『黄金世代』50勝目を挙げた河本は、誇らし気にこう語った。 「うれしいです。私たちの世代で女子ゴルフを盛り上げたいという気持ちがあるので、まだまだ若い子には負けたくない」
古屋雅章●取材・文 text by Furuya Masaaki