日本映画界の労働環境は改善できるはず――カンヌ受賞、役所広司が語る現場の変化と課題 #ニュースその後
今年は俳優の働く環境が争点にもなった。全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)が、労働条件の改善やAIの使用に関する保護措置を求めて、118日間のストライキを実施。役所自身は、AIに取って代わられるという「危機は感じていない」と言う。 「僕もSAGは入っています。『PERFECT DAYS』は日本映画だからOKが出て、アメリカのキャンペーンでもちょっと活動ができました。あれだけの期間、エキストラも含めて、SAGに入っている人が働けなかったんですから、すごいと思います。労働環境や報酬を勝ち取ろうとして頑張った。そうしないと改善されないんだと思いますね。何かを勝ち取るということは、日本映画界には欠けているかもしれない。俳優業界にかかわらず、日本でストはあまりやらないでしょう。いつからか骨抜きにされたんでしょうかねぇ~」 「俳優の報酬、労働環境に関して、日本は韓国や中国に比べてかなり後進国なんです。アメリカと比べたら、草野球と大リーグみたいな差があるんじゃないかな、いや、もっとかなぁ~……」
「貧乏に慣れている」が、労働環境は改善できるはず
1995年の『KAMIKAZE TAXI』以降、活動の主軸は映画だ。長年、映画界に身を置くなかで、課題を実感している。 「僕が映画を中心にし始めた頃は、今と比べると超低予算が多くて、現場は貧乏でした。スタッフは何日も風呂に入っていないんじゃないかというくらい過酷な労働状況でしたし、お弁当も寂しかった。僕はもう、貧乏に慣れてるから(笑)。お金のない現場は当たり前で、全然平気だったんです。でも、映画をやりたいと思う人たちのために、いい環境を整えないといけないですよね」 「当時は映画館もいいところは洋画が占めていました。今はアニメの力も大きいんでしょうけど、日本映画は興行的にはけっこううまくいっているはずなんです。それが、人材育成などに還元されていない現状がありますね。聞くところによると、日本は年間何百本も作っている映画大国なのに、アジアのもっと本数が少ない国のほうが国の援助や労働環境に恵まれていたりするようです」