「てんかん」の高齢発症が増加中!専門医が教える疑うべき“異変”
「たとえば、急に動作を止めて、無気力な表情でボーっとする、口をモゴモゴ動かす、呼びかけにも無反応になる、周辺をふらふら歩き回るなどおかしな行動を取る、といった症状が挙げられます」(前出・朝田院長) 発作前に意識がだんだん遠のき、周囲の状況がわからなくなるような意識障害や記憶障害が起こるため、発作中のことを本人は何も覚えていないのだという。朝田院長によると、高齢者のてんかんは脳血管障害、主に脳出血による後遺症が原因で起こることが多いが、原因不明のケースも少なくないという。発作時以外はほとんど普通に生活ができるので、本人はもとより、家族や周囲も気づきにくい病気なのだ。初期段階で高齢者のてんかんを疑う前兆はないのだろうか。 「日常生活の中で、数分~10分程度、部分的に会話や自分の行動の記憶がすぽっと抜け落ちて、覚えていないということが起きます。本人が家族に対して『そんなこと言った?』『そんなことやっていない』といった記憶障害や意識障害が繰り返し見られるようであれば、家族や周囲は、てんかんを疑ったほうがいいでしょう」(前出・朝田院長) 病院にかかる際は、精神科、脳神経内科、脳神経外科を受診することになる。では、どのような検査を経て、てんかんかどうかを判断するのか。 「“脳波検査”です。脳の神経細胞から出るわずかな電流の波を記録し、脳の異常を診断します。発作が起こるときには、いくつかの神経細胞が同時に電気を出すため、てんかん特有の大きな波が現れます。ただし、1回の脳波検査だけでは、てんかんを示す波が出るとは限りません。3回は検査をする必要があります」(前出・朝田院長) 高齢者のてんかん診断では、これまでの詳しい病歴に加え、家族から発作時の様子を細かく聞くことも重要だという。てんかんと診断されたら、治療は主に薬物療法がとられる。 「抗てんかん薬で適切な治療を行えば、多くの場合、1カ月程度で症状の改善が見られます。しかし、認知症と誤診されるなどして、そのまま治療せずにいると、発作の起こる頻度が上がり、記憶障害は進行します。 また、突然の発作によってケガをしたり、事故を起こすことなどが懸念されるほか、アルツハイマー型認知症などほかの病気のリスクが高まることにもつながってしまいます。高齢者のてんかんは50代以降から発症リスクが高まるので、注意してください」(前出・朝田院長) 早期発見には、家族など周囲の人の気づきが不可欠。薬で治せる病気の治療が手遅れにならないためにも、少しでも疑いがあれば、できるだけ早く専門の医療機関を受診するようにしたい。
「女性自身」2024年11月26日号