“余命あと2年” 元凶コロナにニッチ技術でガチ勝負 宮崎・エア遊具レンタル会社の大逆転物語
トランポリン、ウォータースライダー、大型迷路……空気で膨らむビニール製の「エア遊具」というニッチな分野で成長を続けている会社が宮崎にあります。新型コロナウイルスの影響で大打撃を受けましたが、同じ技術を転用して空気で膨らむ医療用設備など新商品を次々と考案して今もさらに売り上げを伸ばしています。この会社がどうピンチを乗り越え、新商品を開発し続けたのか、秘訣を探りました。
商機つかんだ医療用陰圧室
送風機のスイッチを入れると、地面に寝ていた透明のビニールが生き物のように、むくむくと起き上がりました。3分程度で、高さ2.1メートル、幅・奥行き各2.8メートルの全容が現れました。エア遊具レンタル会社「ワン・ステップ」(宮崎市)が開発した「感染症対策用エア式簡易陰圧室」です。 医療施設などで主にコロナ陽性の疑いのある患者の隔離・検査に使われます。山元洋幸社長の「設置に10分かからない」という言葉は本当でした。 宮崎大学の協力の下、県内の真空ポンプメーカーと共同で開発しました。内部の気圧を外よりも低くし、感染者のいる室内の空気が外に漏れにくいようにしています。利用者の希望に応じ、1室を2~3室に分けたり、広さやレイアウトを変更したりもできます。2020年10月から販売しています。
キャンセルの嵐で「9割減収」
同社の本業は、空気で膨らます遊具のレンタル。エア式のトランポリン、ウォータースライダー、迷路などを大型商業施設や観光施設のイベントに貸し出しています。保有アイテムは約800種にのぼり、国内最大級といいます。 2002年の会社設立以来、競合相手の少ない市場で着実に増収増益を重ね、2019年12月期には過去最高となる6億1200万円の売上高を計上しました。遊具レンタル市場で右肩上がりだった同社がなぜ、医療用陰圧室を発売したのでしょうか。山元社長が説明します。 山元 「イベントは集客が命です。例年、冬場である12月から翌年2月までは閑散期となり、3月からイベントが本格化します。ところが、国内でコロナの感染が広がり始めた2020年は、外出自粛の影響を受けて2月半ばからエア遊具のキャンセルが相次ぎました。遊具とは別の事業に乗り出さないと立ち行かない危機を迎えたのです」